月花に謳う



13




 いや、それよりも――。


「親衛隊の被害?それより重要なことがあるでしょう」


 円堂は分かっているのだろう、無言で肯定を示してくれた。


「転校生。分かってるよね?一般の生徒だから?それとも階級が華人だから?」
「……全く耳に痛い話だ」
「転校生による被害報告、というより問題行動か。こちらも報告は上がってきている。まあ、だからこそ親衛隊の動向に注目していた訳だが。新見、本人から詳しい話は聞いてるのか?」
「そういうことは話さないって言ったでしょ、彼」


 それらしいことは確認しているが具体的に聞いたわけではないし、なにより第三者からの視点を以って、冷静に判断をしたい。


「そうだったな。転校生が生徒会室に入り浸っているのは知っているか?そう、その生徒会室には役員が同行して行くこともあるが、自主的に行くときもあるそうだ。その自主的に行くときとやらに、霜野と五十里は連行されている。腕をとられて、逃げられないようにしてな。二人とも転校生よりか階級が低いし、周りも巻き添えを喰らって、親衛隊にやっかまれたくないんだろう。見て見ぬふりだ。それでいて親衛隊が後になって手を出している。仕方がないことだが、面倒な話だ。」


 調書だろうか、幾枚かの書類を捲り目で追いながら、円堂は淀みなく説明していく。不快な内容に組んだ腕の上、無意識のうちに指先がトントンと忙しなく動く。


「クラスメイトから聞き出した話では、転校生の握力が強いらしくて、二人とも手首に痣を作っているのも見た、という話もある。連行回数はそうだな、どちらかというと霜野の方が多いらしい。たぶんだが、五十里は体格が転校生よりいいし、霜野の方が細身だから連れて行きやすいんだろうな。」


「そこまで分かっていて何もしないの?」


 明確に転校生からの被害を被っているのではないか。イライラと告げれば、ため息が返ってくる。
 全く、溜め息を吐きたいのはこっちなんだけど。


「……それが頭の痛い問題なんだ。転校生の五月女柚木はあくまで、一生徒であり一個人だ。この際、階級は置いておいてな。その生徒の問題行動であり、それを生徒会が容認しているんだ。俺たち風紀はあくまで中立的な存在だが、生徒が校則をおかしたときに働く存在だ。親衛隊には抜けがけ禁止だとか、まあ規則はあるが校則では生徒会に近付いてはならない、というものが存在しない。そうすると一般生徒が業務上でも近寄れなくなるし、そもそもの判断が曖昧になるし、なにかと支障が出てくる」




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