月花に謳う



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「そういえばそうだったね。言ってたかな?毎年一学期末のテスト期間は部活動はやらないんだよ。まあ、毎回テスト期間は部活の活動制限がかからなくても、園芸部は年間を通して活動は少ないんだけど」
「あ、そうなんですね。やっぱり梅雨だからですか?」
「そうだよ。あと言い忘れついでに思い出したんだけど、うちの部って僕たち以外に部員がいるのは伝えてたかな?」
「いえ、初耳ですね」
「僕たち以外にはもう一人いるんだよ、幽霊部員なんだけど。えっと、どこにあったかな?」


 茜さんは立ち上がると雑誌やらノートが並べられているところから一冊のノートを取り出す。どうやら過去の花日記らしい。


「これこれ。ええっと…ああ、ここだ」


 差し出されたページを見てみれば、お手本のように端正な字で花日記が記されている。字もだけれど、文章も花を愛でていることが十二分に伝わってくる。どうやら今の園芸部には似たような人材が集まっているらしい。


「類は友を呼ぶ、ですかね。気が合いそうです」
「そうだろうね。きっと合うと思うよ。まあ神出鬼没というか、来ること自体が稀なんだけど。」


 そう言って微苦笑をして見せる。なるほど、確かに幽霊部員だ。


「そうなんですか、ぜひ会ってみたいですね」
「そう言ってくれると嬉しいな。部員同士仲良くして欲しいからね。彼に会う機会があれば伝えておくよ」


 その後も、久しぶりに会ったのもあって会話が弾む。途中、茜さんが淹れてくれたハーブティーとクッキーを片手に今後の部活のことやこの学校のことなど他愛ないことを話す。


「そういえば、悠璃くん。噂の転校生くんとはあれからどう?生徒会室に連れて行かれるって聞いたんだけど大丈夫?」
「大丈夫ですよ、最近は友人と一緒に逃げるようにしてるんです。寮の方の部屋も別に部屋を確保できたので戻ってませんし…」


 転校生が来た当初より、連行される回数は減ったと思う。今日のように休み時間になると同時に教室を出て、授業開始寸前に戻ってくるようにしてからは遭遇率が下がった。最初からこうすれば良かった。生徒会室に行く機会が減った分、アヤさんに会う回数も減少しているのは心底残念だ。同じ学年だから会いに行こうと思えば行けるのだけど、生徒会役員に人目があるところで気軽に声をかけられるわけがない。親衛隊はもちろん、階級のこともある。



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