月花に謳う



7




「ゲストハウス施設って分かります?あそこへ行く小道をすこし外れたとこなんですけれど」
「ああ、あそこかぁ。随分使われてないけど、よく知ってたね。普段が使われてないし、僕たち三年生は知ってるけど……あ、もしかして館花くんに教えてもらった?」
「そうです、よく分かりましたね」
「三年生は一年のときにあそこで肝試しやったからね」


 ……ん?


「どうしてそんなことを…?」
「親睦会だよ。僕たちのときはまあタイミングが合わなくてね、毎年五月にやってたのが七月にまでずれこんで…気付いたときには肝試しをすることになってたんだ。勉強合宿を兼ねて二泊三日であそこに泊まったんだけど。今思えば、あれ考えたの誰だったんだろう?」


 茜さんの説明が衝撃的すぎるのだけど、確かにそんな突拍子もないことを誰が考えたんだろう。興味本位だけど瑞樹なら知ってるかもしれないし、確認してみてもいいかもしれない。……まあ瑞樹がいつからこの学校の情報網を握っていたのかが判りそうで怖いけど。


「あと、隣の紫陽花はまた別の場所です。ゲストハウスとか寮とは反対の…森?方面の方です」
「ああ、森ね。校舎の裏手…いや、森だね…」


 正確には月花さんの温室の近くなのだけれど、少し方向が違う。敷地が広すぎて判然としないのだけど、木が鬱蒼と生い茂る場所に校舎が囲まれているのだ。もう森と呼んでしまって差し支えないと思う。というかそれ以外に表現方法が分からない。茜さんも言い直してるし。


「もう少しで梅雨が明けてしまうだろうし、盛りのうちにプリザーブドフラワー用にすこし摘ませてもらう方がいいかな?ドライフラワーとか押し花もいいねえ」
「その前に期末テストですね…」


 テスト範囲の発表はまだだが、そろそろテスト期間のはずだ。勉強自体はコツコツやるタイプなので、特別することはない。いつも通り、復習をしたり参考書を解いたりするだけだ。特級Bランクをもらっているからには順位を落とすわけにはいかないんだけれど。



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