月花に謳う
3
「なあに、嫉妬?でも奪う気は全然ないよ、ただ俺は愛でたいだけだから。」
「まあお前の周りって、親衛隊のやつら侍らせてるから顔がいいやつばっか揃ってるよなー…」
「あれ、知ってたんだ」
「食堂であんだけ親衛隊集めたテーブルのなかにお前がいたから、見つけたときは心臓止まるかと思ったわ」
「ああ、それは同意かなあ。冬吾くんに言われて一緒に食堂行ったら、本当に親衛隊の人たちと仲良さそうに食事してるんだもん」
歩先輩は料理上手で基本的には自炊をしているし、この学園では珍しいお弁当派だから、冬吾に誘われなければ食堂に行く機会はないのだろう。
「そんなに驚くことかな?」
「悠璃くん、全然わかってない。確かに親衛隊の人たちって綺麗なひとばっかだし、そのための華人ランクをもらってる人も多いけど、その分いろいろと危ないんだよ。制裁とかさ、最近では聞かないけど昔は結構酷かったみたいで僕が中等部のときには噂が流れてきてたもん。だから決めつけるわけじゃないけど、内部進学の人たちのなかではイメージが悪いんだ。偏見っていうわけじゃないんだよ、ただそういうイメージが強いっていうだけなんだけど…説明しにくい…」
歩先輩が眉間に皺を寄せながら唸るけど、なんとなく分かる気はする。親衛隊からの嫌がらせは続いているし。月花さんに会う切欠になったのも親衛隊との追いかけっこだし。
「でも悪い子ばかりじゃないよ…?俺、見る目はあるつもりなんだよね。俺が仲いいのはいい子ばかりだもの」
「それはなんなとなく分かる。悠璃は性格悪いやつとは合わないだろ。じゃないと歩を猫かわいがりしないだろうし」
惚気かな?
「悠璃くんが綺麗なものを好きなのは知ってるけど、悠璃くんの理想のひとを探すのって大変そうだよね…。モデルさんとか?だめだ、想像つかないや」
理想のひと、ね。
「それならもう見つけましたよ。とっておきの佳人を」
嫣然と微笑んでみれば、恋人たちはそろって硬直したまま瞠目した。その様子が可笑しくてくすくすと笑う。
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