月花に謳う



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華人ランクの人たちは容姿による騒動への対策としてそのランクをもらっている人も少なくない。だってこの学園ではスクールカースト制が根強いから、下手に可愛らしい子を襲おうとしてもランクが上ならそんなことはできない、そういう意識が無意識のうちに働くような雰囲気と刷り込みがあるから。外部生の俺はそこまで毒されてはいないけれど。


「ねえ、冬吾。これどこに向かっているか分かる?」


 転校生のもう一方の手で手をつかまれ、俺と一緒に引きずられているのは冬吾だった。言わずもがな、一番最初に目をつけられていたのだから当然だ。

 小声での会話に、俺の方が背が低いから冬吾も背を屈めて耳に口を寄せてくる。眉間には皺が寄っていた。温厚な彼にして珍しいことだった。


「現実逃避するな、これどう考えても生徒会室か風紀室しかないだろう」

「だよね…」


 もうなんか色々面倒くさい。だるい。

 悲しいかな。転校生が馬鹿力なせいでとてもじゃないけど俺の力では、捕まれた手を振り払うことは叶わなかった。


「この後お互い無事であることを祈ろう。」


 そう言って、二人で「ご愁傷様」と肩を落とした。



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