月花に謳う



18




 放課後。件の転校生、五月女柚木は生徒会室にいた。


「柚木、どうかしたの?」


 冷たく怜悧な印象を抱かせる顔立ちとは反対にやわらかな声で尋ねたのは副会長の白井恵太(しらいけいた)だ。


「うーん。あのさあ、俺の同室者って知ってるか?」


 粗雑な物言い。本来スクールカーストの意識が強いこの学園だ。皇帝の位に次ぐ貴族の位をもつ生徒会の第二位の男に向かってこの言葉遣い。周りに他ランクのものがいたら酷い反発を買っていただろう。
 けれど生徒会は落ちた。堕落したと言ってもいい。一時のことであれど、恋愛などに現を抜かすことは高位の階級にいる者にとってあるまじきこと。過ちに気付かないのであれば、それは取り返しのつかないことを招く。さて。この場にいる生徒会連中の誰が這い合ってみせるだろうか。


「同室者ですか?たしか柚木は一人部屋では?」

「いや、違うだろ。たしか調整が間に合わなくてどこか適当に入れられてるはずだ」


 確かここに。書類が雑多に乗るデスクの上、生徒会長の北見統十(きたみみちとお)。男前の顔立ちに明るく髪を染め、制服を着崩しアクセサリーも身に着けている。同じように派手に着飾っているのは会計の吉田遙(よしだはるか)。こちらは甘い顔立ちというのか色気がある。



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