月花に謳う
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瑞樹にはもう俺の――否、この学園におけるすべての情報が筒抜けだろう。正面の壁いっぱいに取り付けられた数枚のモニターに数台のコンピュータや出力機、床はなにやらよく判らないコードがうねっている。彼自身が手ずから仕上げたシステムらしい。その仕組みについては、俺には難解すぎてよく解らない。
モニターには学園中から送られてくる監視カメラの映像が次々と切り替わる。強姦などが起きても瑞樹は特別要請がない限り、動ない所存らしい。曰く、「情報は最大の武器。なんの代償もなしに請け負えないね。それに見合うものを提示してもらわなくっちゃ。こっちも慈善じゃなくて、商売だからね」とのこと。
「正規ルート?」
「そ。編入試験一応、受けてんだよね。ギリギリ合格点。編入前の学校がレベル高いとこだったから、テストは形式だけみたいだけれど。でも、どうかなー…。うーん……」
ほんと、編入試験の点数とかどうやって知ったのか。
「書類が偽造されてるかもしれないし。つか、あの変装どうにかなんないのか?」
「変装?」
「そうそう。保護者が学校に提出した書類がこれ」
なにやら画面を操作して、出てきた履歴書の写真部分が拡大される。それをじっと見つめる。
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