月花に謳う



09




「よくも面倒臭いことしてくれたね」


 あの馬鹿役員め、と香ちゃんが忌々しそうに吐き捨てる。彼の機嫌がここまで降下するのも珍しい。


「霜野、いい?今日は僕のとこに泊まりに来て。というか、暫く誰かの部屋にローテで泊まりに行った方が……。いいや、霜野はとりあえず、今日はさっさと荷物まとめて僕の部屋に来て。若潮、霜野に説明しといて、霜野見てなかったから」


 苛々とした香ちゃんの剣幕に押されて反射的に頷くと、彼はスマホを取り出してメールを打ちながらどこかへ行ってしまった。
 一体どうしたんだ、ときょとんとしていると千波ちゃんに制服をちょいっと引っ張られる。


「あの、悠璃さん」

「ん?どうしたの」

「今さっきの食堂の悲鳴なんですけど…。」

「うん」

「あれ、生徒会役員と転入生が原因です。簡単にまとめると、副会長様が転入生に笑いかけてて、書記様が彼に懐いてるようでした。会長は……転入生にキスして、殴られてましたが、どうやら彼を気に入ったようです。」


 殴られて気に入るってマゾヒストなのだろうか。


「悠璃さん、転入生と同室ですよね?彼とはあまり関わらない方がいいです。なので、今晩はとりあえず早く自室に戻って荷物まとめて総括の部屋へ行ってください。いいですか、絶対ですよ?」


 ぐっと顔を近づけられる。悪戯心半分で、千波ちゃんの頬に脣を寄せた。
 真っ赤になって口を開いたり閉じたりする千波ちゃんは可愛い。


「ちょ、悠璃さんっ!」

「大丈夫。今日は大人しく帰るから安心して。」


 その場に居合わせてメンバー全員の顔を見て微笑む。彼らは安堵したようで、絶対ですよ、と言い募って来る。それからはせがまれて一人一人の頬に口づけて解散となった。



29/106
prev next
back





×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -