月花に謳う
05
「みんな今日もかわいいねー…」
若干現実逃避をして呟けば、殆どの者が頬を染める。ほら、そんなとこも可愛い。そうやって正直なところがすごく好い。
「なに、霜野、あれと同室なの?」
「残念ながらね」
あー、やだなあ。と再度ぼやいて隣に座る香ちゃんを抱き寄せて首に顔を埋める。あー、いい匂いする。あ、これこの間あげた匂い袋の香りだ。街で見つけて気に入ったから香ちゃんにもプレゼントしたんだよ。おそろい。香水は匂いが強くなりがちだからあまり好きじゃないんだ。
宥めるように香ちゃんがぽんぽんと背を撫でてくれる。ぐいっと頭を擦り付ければ、「くすぐったいよ」との声。あんまり笑わない香ちゃんの笑い声に俺もなんだか嬉しくなる。
ちなみにこのじゃれあい、子猫同士のじゃれあいのようだと言われた。香ちゃんも笑ってるし、周りからすると眼福らしい。他の親衛隊の子たちの穏やかな視線を感じる。
うん、香ちゃんはマジで俺の癒しだわ。お嫁さんとかこんな子がいいな…いや、でも無理か。きっと香ちゃんは、俺の最愛には成り得ない。恋情に変わり得ることもない。
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