月花に謳う



01




 いつからか綺麗なものや美しいものが好きで集めていた。たとえば、ビー玉や千代紙、それから海岸で拾った角の取れた色つき硝子、小さな箱いっぱいに詰まった紫陽花の花弁のプリザーブドフラワー……他にも色々。なんてことのない、俺がそれとなく心を惹かれたものたち。
 それは人だって同じ。

 俺の通う学園はいわゆる坊ちゃん学校で、大手企業、良家の子息なんかが多く通う伝統ある進学校。中等部と高等部は山奥に隔離されていて、ひどく閉鎖的だ。その結果と言おうか男子校とあって、同性愛が蔓延っているのは否めない。多感な時期だ、そうなってもおかしくはない。俺は否定も肯定もする気もがないが。
 うちの学校にはもう一つ、他と違うところがある。身分制度。俗に言うスクールカースト制度だ。差別でもなんでもなく、これはただ生徒へのけじめとして存在する。俺は勉強の特待生だから特権階級Bランク。これは下から三番目のランクで、特待生故に可もなく不可もない身分。


 俺は身分制度には固執しない。ただ美しいもの、綺麗なものが傍にあれば構わない。唯一を持たない俺にとって、目に見える世界というものはひどく色のないものだった。



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