葡萄石:4
どうしたらこの胸の灼けるような想いを伝えることができるのだろう。互いがおなじ想いを抱いているだろうことは凡そ容易に予想がついたが、それでも伝わらなくてはダメなのだ。
平素よりずっと熱い吐息が口唇のすき間からこぼれ落ちる。まるで風邪で熱を出したときのような、息苦しいくらいのそれ。寄せたまろい頬のうえに落ちて、白い皮膚に溶けた。
伝えたい。けれど僕たちはその術を知らない。方法が分からない。
嗚呼、どうしたらいいの。身が捩れるくらいにもどかしい。
ともすれば、泣き出してしまいそうだった。翡翠の瞳に水のうすい膜が張っている。薄暗闇のなかでも、それはきらきらと瞳を輝かせて、ほんとうの宝石のようだった。琥珀が瞳の表情のなかでとりわけ好きなうちの一つであることを翡翠が知ることはない。
「翡翠、泣かないで。ね?」
兄がぽたぽたと流れ始めた涙を赫い舌をのばして舐めとった。頬をすべり落ちた涙は毛足の短いラグを濡らしてじわりとまた頬を濡らした。
のどの奥につっかえて言葉にならない。嗚咽だけが音を成した。
そうなるともうどうにもならなくって、僕はただ兄の服をきつく握り、兄はつよく僕を腕に閉じ込めるだけになる。