翠雨 | ナノ


翠 雨  


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柘榴石:2



「それが終われば翡翠は一人にさせないし、最終手段もある。それさえしてしまえば、たぶん制裁する気すらもなくなるよ」


 そう、最終手段は兄弟だと公表することだ。それならば彼らも手を出せなくなる。流石に親衛対象が可愛がる身内に手を出す馬鹿などいないはずだ。もしそんな馬鹿がいるのだとしたら、それこそ思い知らせてやる。


「なんだ、それ。お前が言うと不穏にしか聞こえねえんだけど」
「最終手段だからね。使われないことを祈っててよ」


 まあ、兄弟だと公表して困るのは嫌がらせをしていた奴らや悪意を翡翠に向けた奴らだけだ。二条もそんなに嫌そうに顔を顰めなくたっていいのにね?本当に素直なんだから。
 二条は渋い顔をしたまま、これ以上は無駄だと理解して自分の仕事に戻った。さて、やることもないし、折角来たのに何もせずに帰るのも勿体ない。せめて副会長が返ってくるまでは書類や資料の整理でもしよう。

 そうしてしばらく仕事をし、ふと時計を見ればだいぶ時間が経っていたようだ。今日は翡翠がこちらへ来てくれる予定になっているが、もうそろそろ終わりにしようか。


「二条、悪いけど、そろそろ翡翠が来てくれる予定だから切り上げてもいいかな」


 作業をしていた彼は呆れたように息を吐いて頬杖をついた。


「それ、わざわざ俺に確認しなくても帰るんだろ?仕事が終わってるお前を引き留める理由もない」
「そうだろうね。じゃ、待ってる間にお茶でも淹れようか」
「ほうじ茶でも淹れてくれ」
「二条の分も淹れるなんて僕、言ってないよね?」
「ついでだろ」
「ま、いいけどね」


 二人分のお茶を入れ、書類に目を通し確認作業をする。しかし、約束の時間になっても翡翠が現れない。遅れることがあれば連絡が入るはずだがそれもない。
 そのことを訝しみ始め、探しに行こうかと書類を片付け始めたときだった。
 生徒会室の扉がノックされ、こちらの返答を待たずに開かれた。


「おい、木附はいるかっ?緊急なんだが……」
「いるよ、どうしたの。僕に用?」
「おいおい、風紀が駆け込むってことは何か面倒ごとか?」


 このタイミングで風紀が僕に用事?嫌な予感がする。
 二条も不穏なものを感じたのだろう、眉をきつく顰めていた。



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