青虎眼石:雨
雨が降る。
昼休みの生徒会室。
二条の背後の窓の向こう、暗い色をした空と白い線を描く雨が映っている。
こう雨では翡翠と一緒に昼食をとることもできない。
「木附、お前機嫌悪いだろ」
顔を顰めた二条がこちらを渋々と言ったふうに見ながら言い捨てる。
「御影はどうした」
「分かってて訊いてるでしょ?」
雨だからあのベンチでの昼食会はできない。かといって校内でゆったりと誰にも見られない場所で食べられそうな場所なんて思いつかない。生徒会室から俺たちを見ていた二条なら知っているはずだ、なのに何故訊く。
室内に雨音だけが響く。
「…大丈夫なのか、」
ぽつり。思わずといったようにこぼれた二条の言葉。
ここでやっと二条が何を意図して御影の名前を出したのか理解した。要は親衛隊に翡翠が何かされていないか、そう言いたいのだ。
「そのための俺だ」
「それが分かってる。だからそれが逆に働いてないのか、って言いたいんだよ」
「…俺が悪化させてるって言いたいの?」
「別に、そうは言ってないだろ」
だけど変に言葉の途中で止まったり、その表情が暗に肯定しているよ、二条。全く、正直者だ。嘘が下手くそすぎて笑えてくる。
「どっちにしたってただの嫌がらせくらいで離れるわけない」
むしろ、離れられないのだ。もし離れたとして、翡翠は壊れてしまうだろうし、俺だって正気でいられるか分からない。本当に、今更もいいところ。なんて愚問。嫌がらせぐらいで動じられるほど、俺たちの想いは薄っぺらなわけないんだよ。
窓の外はあの日のように鈍色の曇天と地面を殴りつけるような雨だった。