青虎眼石:2
琥珀。その言葉に目の前の彼がぴくりと眉を跳ね上げて。
「あのね、君そういうの止めておいた方がいいよ」
ため息交じりにそう言われても何のことか分からない。
「会計のこと。名前で呼んだでしょ。そういうの反感を買うって言ってるの。分かる?」
嗚呼。
いろいろな思いが混じった感嘆。
なんてちっぽけ。なんて浅はかで愚か。なんて滑稽。そんな醜悪さには嘲笑しか出ない。
「なにを笑ってるの」
「いえ、可笑しくて」
ふふ、と淡く笑えば眉は不機嫌そうに歪んだ。
「……まあ、いいよ。僕は忠告にきただけ。その態度のままでいるなら親衛隊から制裁を受けるよ。会計親衛隊の所属者は群を抜いて多い。さすがにそれを止められるほどの力は生憎と、僕は持ち合わせてはいないし。なにより責任が僕にふりかかる」
最後のが本音だろう。ずいぶんと利己的な人物だが、彼が琥珀の親衛隊の副隊長。琥珀を慕ってほしいような、ほしくないような。複雑な気持ちになる。
「だからさ、大事になる前に会計から離れてくれる」
同意を求めるかのような声音に思わず口を噤む。
「離れなきゃ、イタイ目見るよ。せいぜい大人しくしてるといい」
「それだけは…できません。」