青虎眼石:副会長
生徒会室に行くと副会長さんがいた。僕を見ると驚いたようで目をまるくし、すぐにやわらかに細められた。色々な噂があるのに、それでも好意的な態度で迎えられることに気分はすこし明るくなった気がした。
「こんにちは。御影……翡翠くんだっけ?」
「はい。先日は伝言を伝えて頂けたようで。ありがとうございました。」
「いいえ。とりあえず座って下さい。どうぞ。お茶でも淹れますから」
「…ありがとうございます。」
傍らに立っていた琥珀にトンと背中を押されて座るように促される。ソファに二人並んで腰かけるとすぐに琥珀の掌がするりと絡んできた。はあ、と安堵の息が漏れる。
慣れない視線に晒されて、神経がとがっているようだった。緊張がゆるむのと同時に身体の力も抜けて、半身を琥珀にぐったりと預ける。ふわり、と頭にかすかに触れた感覚はたぶん、琥珀の唇だ。なんだかむずむずする。胸のあたりにじわりと熱さがにじんで衝動が身体にふわりふわりと伝播する。
キスしたい。触れたい。
少しして給湯室らしき扉の開閉音がすると絡んでいた指は絡んできたときのように自然な動作で離れて行った。僕もそっと身体を起こす。
「お待たせ。御影くん、何がいいか分からなかったからココアにしたけど飲める?木附先輩はブラックで大丈夫ですね?クッキーも良ければどうぞ」
僕たちの前に湯気ののぼるカップとソーサーのセットが一つずつ置かれた。それからテーブルの中央にはクッキーの入った大きめのお皿が一つ。
「大丈夫です」
「大丈夫だよ」
それは良かった、副会長はそう言って微笑んだ。笑顔の綺麗なひとだと思う。だから優しそうな雰囲気があるのだろうか。