青虎眼石:2
「翡翠」
「あ、……なに、こはく」
鎖骨をがぶりと噛まれてピクリと肩がはねた。
快楽からくる生理的な涙が目の縁にたまっている。頬や皮膚はうっすらと上気して薄紅色をしているんだろう。けれど、琥珀の薄暗く獰猛な双眸に身震いが奔り、首元まで肌を朱に染めた。
「好きだよ」
「うん、僕も。すき」
琥珀の口元が綻び、目も細められる。うっそりとした微笑。
目尻から涙がこぼれた。
ああ、この歓喜と切なさと愛しさと、それから幸福とを含むとドロドロとした感情をどうしたらいいだろう。
好きだ好きだすきだ。どうしようもないくらい愛しい。
はちきれそうな恋心を理性が縛り上げている。僕たちは越えてはいけない一線があることを理解している。理性と父からの激しい拒絶された過去からこれがいけないことだと罪の意識がはたらいて、兄弟であるという事実に打ちのめされていた。
どうしたらいいんだろうね、琥珀。満たされた部分とそうでない空白。すべて埋まらないとたぶん、この苦しいのは治らない気がする。