翠雨 | ナノ


翠 雨  


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青虎眼石:交わす



 くちづけを幾度となく繰り返す。指先を絡めて、身を寄せ合い、胸中に渦巻く熱を伝えた。
 薬指に指輪を嵌めるのはそこが心臓に繋がっているからだと何かで知った。迷信なのか本当なのかどうかは知らないけれど、指先が心臓に連結しているというのは本当だと思う。指先に伝わる熱で相手の存在をきちんと認識したり、目の前のことが現実なんだと知ることができる。

 夢じゃ、ない。現実だ。
 もう会えないと思っていた。それがこうして触れ合えて、まるであの頃に戻ったかのようだ。


「翡翠」


 琥珀の先程より幾分高くなった体温の掌が、そろりと首筋を撫ぜてうなじにかかる髪を擽る。ぴたりとうなじに触れる琥珀の膚の感触と熱がひどく心地いい。うっとりと身を任せていると、気を取られすぎだとばかりに、くちに貪るようなキスをされた。手であたえられる熱とはまた違った、身を灼くような熱にじりじりと体の中心に火が灯る。キスが終わるころにはすっかり息があがっていた。
 琥珀の手が背にまわされ、寝台の上にそっと横たえられる。身体がシーツに沈む。

 暗闇に琥珀の飴色の髪がよく映えて綺麗だ。

 目を閉じてしまうのが勿体なくて眇める程度に留める。降ってくるくちづけに応えながら、琥珀のなめらかな肌に手を這わす。覆いかぶさる琥珀の手もシャツのなかへ侵入してきて、淡く反応を示す身体に愛撫を加えてゆく。


「ん…っ」


 上擦った声がのどから鼻に抜ける。僕の白い肌の上を赤い舌が這い、ときどき甘噛みをされた。



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