薔薇輝石:4
「……翡翠」
ゆっくりとした調子の確かめるような声。彼の金色の髪が風に揺れた。
「あ、」
口からこぼれた音は意味を成さずにことりと地面に落下した。
「やっと会えた。俺の宝石」
「こ、はく……」
それは僕も同じ。ずっと会いたかった。僕の大切な大切な宝石。そうして最愛のひと。
この学園の生徒会会計で、兄の木附琥珀が目の前にいた。
「翡翠」
優しい腕に抱き締められる。
わっと感情が湧きだして体温が上がる。それは翡翠色の右目からボロボロと涙となってこぼれていった。
「琥珀…っ。こはくっ、こはく……」
「うん、翡翠。俺のたからもの」
僕を抱き締める力が強くなる。僕も琥珀の胴に腕を回してシャツを強く握った。
視界に映る首元の肌に、接する体温に、襟足の金色の髪に、紡がれる言葉と鼓膜を震わす声に。ひどく安堵して、けれどどうしようもないくらいの胸底から湧き上がる歓喜があって、それ以上に琥珀は愛おしくて。ずっとずっとこうしていたいくらいだった。
瞬きとともにこぼれた涙で少しだけ明瞭になった視界に、琥珀の耳朶に刺さる緑色の宝石を見つけてまた視界が滲んだ。
視界の端で会長が去って行く姿を見た。