珪孔雀石:2
「君はずいぶんと機嫌がいいようだ」
「………」
お前に腹を立てているんだ、何を言っている。そう言おうとして口を噤んだ。機嫌がいい、言われてみればそれは確かだった。
「なにかいいことでもあった?」
「……ああ。」
「苦虫を噛み潰したよう顔って今の二条のようなのを言うのだろうね」
この男に嘘を吐いたって無駄だ。言ってしまわなければ彼は厭な笑みを湛えてこちらを窺い見るだろう。獲物を狙い定めるかのように。色んな意味で木附琥珀という人間は敵に回したくはない。
「そう、でも俺には関係ないことだ。浮かれて羽目をはずしすぎなければね。俺にはどうだっていいことだよ」
そう言って席に戻った琥珀がそっと目蓋を伏せ、視線を静かに落とす。その様は綺麗の一言に尽きる。それには彼本来の美しさとその裏に潜む翳が一層引き立てているのだ。彼の何がそうさせているのか。総一には好奇心はあっても深入りしようという興味は持とうとは思わない。
総一はそろそろと息を吐き出した。