翠雨 | ナノ


翠 雨  


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珪孔雀石:対峙



 生徒会室。土曜であるというのに休日出勤もいいところで。中間考査が終われば細々したものが残っている。歯科検診や血液検査、部活動の壮行会、一学期末のクラスマッチの日程調整、段取り決め。二学期にある体育祭のグループ分け、団長決め。そのうち生徒会新役員についても目ぼしい人材を見つけなくてはならない。
 会長席に座す総一に、役員のデスクに囲まれたソファで優雅に紅茶を飲む人物が声を掛ける。あまり抑揚のないものだった。窓から降り注ぐ陽光がかの人物の頭髪をきらきらと煌めいている。シミもニキビの一つだってない陶器のような滑らかな肌も、一つ一つのパーツもさることながら配置されたそれらが造り出す顔立ちの造形は綺麗だ。総一はときどき彼を見つめているとビスクドールを思い出した。


「木附、茶なんか飲んでないで仕事しろよ」

「充分したよ。ほら、そこに会長印が必要なものは分けてある。それに急ぐ書類もない」

「お前がいない分、こっちは忙しかったんだ。いなかった分も働け」

「横暴だな」


 やれやれと息を吐いた琥珀に総一はちいさく舌打ちする。扱いにくいったらありゃしない。


「二条」


 立ち上がった琥珀が総一のデスクの前にいた。その口元にはうっそりとした笑みが刻まれている。薄ら寒い笑みだ、と思う。



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