珪孔雀石:動揺
会長さんとの遭遇から早くも一週間以上が経過した。あれからこれといって変わったこともなく穏やかな日々を送っている。
ゴールデンウィーク前にあった中間考査の結果も返ってきて――クラス内総合五位だった。補足しておくと、うちのクラスは特進科なので普通クラスと受けるテストが違うから順位についてはクラス内のみだ――これには海外にいる母にメールで知らせるとすぐにSkypeで電話がかかってきて、喜んでくれてるようでこちらも嬉しかった。
あの裏庭への訪問はあの日の翌日以降は行っていない。今日は行ってみようか、そう思って友人に断りを入れて弁当を持って裏庭を訪れた。
今日は先客がいた。言わずもがな。
「よう」
「……お久し振りです、会長。」
「おう、それ弁当だろ?突っ立てないで座れ」
ほら、とスマホを片手にした会長が自分の隣をトントンと叩く。ベンチは一つしかないからそれは必然なのだけれど、なんだか癪だ。知らず知らずのうちに眉根が寄る。
「会長はごはん食べないんですか?」
「いや?食べたぜ。ここ来る前にな」
「そうですか」
膝のうえに弁当を広げて食べているのだけれど、隣からの視線がどうにもやかましい。お腹が空いているのかと思ったのだがどうにも違うらしい。
会長がじっと僕の横顔を見てくる。一体なんなんだ。じとりと横目で会長を睨めば、会長の口から思いもよらない言葉が出てきた。
「やっぱさ、お前似てるわ」
「…はっ、」
何に、もしくは誰に。なんだか嫌な予感がしてぐっと眉間の皺を深めた。