珪孔雀石:6
「先輩、何かありましたか?」
「ん?」
「いえ、今笑ってたので」
「嗚呼」
なるほど。思っていたよりもあの後輩に会えたことは良かったのかもしれない。少しズレた、翡翠色の瞳の色が印象的な全体的にほそい少年。あれと話すのは面白い。常にない新鮮味がある。それはやはりあの少年がズレているというより、真面目なせいか。
どちらにしろ暫しの好奇心を満たすのには十分だ。
「後輩に会ったんだよ。一年。すっげ、なんかズレてんの。そういえば……」
「なんです?」
陽光を受けてやわらかに光の環を作る黒髪、色白な肌。そして酷く印象的な名前と同じ色の双眸。
「会計に似てんな、あいつ」
あの瞳の奥にある重苦しい色合いと、俯いたときに陰るその表情が。どことなく会計を思わせていた。だから他の生徒よりも近づきやすかったのかもしれない。
そう理解してしまうとすとんと腑に落ちた。いつか二人を引き合わせてみせるのもいいかもしれない。
「会計に?名前は訊いたんですか?」
「御影だと。下は翡翠」
「御影……ああ、宝石関係の事業を手掛けてるとこでしょうかね。名前も宝石ですし」
篠原の言葉になんだ、名前もか、と共通点を見つけく首を傾げる。琥珀と翡翠。どちらも同じ太古からの宝石。
不思議な共通点に首を傾げるとコーヒーを嚥下した。
「うまい」
賛辞の言葉に篠原はその整った顔に柔和な笑みを浮かべていた。