天青石:4
久住の声と部屋のドアをノックする音で目が覚めた。
「おい、御影。いるんだろ、昼飯買って来たから出てこい」
どこかぼんやりとする頭でドアへと向かい、戸を開ける。購買のビニール袋を提げた久住が立っていた。
恐らく目が腫れているのだろう。久住が眉を顰める。
「ありがとう、久住。でも授業は…?」
まさか、サボってないよね?という意味をこめて見れば、サボってねえよ、との回答。それは良かった。こう見えて授業はしっかり受けるし、案外真面目だから成績もそこそこいいらしい。
「お昼からもサボんないでね」
「わーってるよ。ほら、飯」
かさりと音を立てるビニール袋を受け取ろうとして、俯いた僕はあっと声を上げた。久住の手が額に触れたからだ。途端、びくりと反射的に揺れる僕の肩。人との接触が苦手なことを知っている久住はすぐに手を離してくれた。
「熱はない、な。午後から出てくるか?」
「ううん、悪いけど出ない。ちょっと怠いんだ」
流石に泣きすぎた。鈍く痛む頭と熱を持った目蓋。目なんて真っ赤なはずなのに何も言わない同室者の優しさがひどく有難い。
「心配してくれてありがとう、久住」
ああ、ほんと馬鹿だなあ。
なんて、報われない不毛な恋。