天青石:3
宝石と広告関係を手掛けていた母は数年のうちに事業を拡大し、ときどき雑誌で取り上げられるほどに会社を成長させた。元から仕事人間のようだったけど、家庭にいつくことを止めたのが大きな要因だろう。
母は小学校のころは家に帰って来ていたが、中学は地元の有名私立に入って勉学に忙しくなって、僕とはだんだんと時間帯が食い違うことが多くなっていった。中学三年のとき、母がしばらく海外に仕事で行くことになって前々から考えていたという全寮制の男子校を勧められた。
母なりに心配してくれていたらしい。今の私立の偏差値からしたらそこもそう変わらないらしく、今の成績を鑑みる限り転入試験は面接と作文だけで構わないとのことで、母が海外に行く前、今年の春休み中になんとか全寮制の男子校へと転校した。どちらも中高一貫校の進学校だったので進度もさほど変わらず、自炊に関しても忙しい母に代わって料理をするようになっていたから問題なかった。
問題は男子校ならではのもの。いや、山奥にある初等部から一貫の男子校というところだった。親衛隊というものの存在だ。同性愛が認められる、ということだ。それについては大いに結構。
中等部ではファンクラブという名称を語りつつも、高等部のそれとさして変わらないものだったろう。そう思っていたが高等部になってまだ一か月ほどでも、しかし差は歴然だった。まず対象者への好意が熱烈だ。それから性欲。セフレなんてものもあるというのは黙認されている。
ただ生徒会の親衛隊の規模はデカすぎる上にやれ制裁だのなんだの、過激なのだ。制裁といえば生徒会親衛隊。そんな認識だ。確証のない噂は嫌いだしつるんでいる人たちも同じ気質で、そういったことについてはとんと無頓着だがあまりいいものではないらしい。表立たないが停学処分なんてものを受けた人も、ここ一か月でいるとかいないとか。