いつまでも子供だと思っていた弟が、ある日突然高校生探偵として新聞やニュースにでるようになり家族としては鼻が高い思いだった。
それが、まさかこんな事になろうとは思いもしなかった。

長かった一週間が終わり、休日だからという事でいつもり遅く起きてパジャマ姿のままリビングに降りて行ったのがそもそもの間違いだった。
自分の部屋から下へ降りて行くとご飯が炊けるいい匂いが感じられた。
ご飯とお味噌汁と漬物と…寝ぼけた目を擦りながら今朝の朝食について考える。
大きく欠伸をしながらリビングへ降りた名前は食卓の自分の席へ腰を下ろした。

「お母さん、おはよう。今日の朝ごはんは……」

「おはようございます、名前」

自分の席に座って、不意に隣に人がいるのを感じ、ああ、今日は一ちゃん早く起きたのね。
そんな事を考えていると隣から聞こえてきたのは聞きなれた弟の声ではなかった。
それを頭で理解するまでに数秒時間がかかった。

「え?」

「おや、どうしました?まだ寝ぼけているのですか?可愛い人だ」

「え…いや、高遠さんなんで家でご飯なんか食べてるんですか?!」

名前は、隣に座って味噌汁をすする男…高遠を驚いた表情で見つめた。
高遠は、味噌汁のお椀をテーブルに置くと胡散臭い程の優しい笑顔を向けた。

「お義母さん、とても美味しいお味噌汁です。こんな美味しいご飯が食べられるなんて幸せです」

「まあまあ!そんな嬉しい事言ってくれたの二人目ですよ。この子は本当に男っ気がなくって。きっと弟がべったりだからかしらね」

「いやいや、お母さんなに失礼なこと言ってるの」

娘を他所に、高遠の言葉に気を良くした母親は頬を赤く染めながら、用事で出かけるからごゆっくりと告げると足早に外へ出て行ってしまった。
名前は、自分のご飯を用意してもらうことができず、渋々キッチンへ向かい鍋に入っている味噌汁をよそりご飯をついでフライパンに残っていたおかずを皿に乗せると高遠の隣に腰を下ろし両手を合わせてご飯を食べ始める。
名前がご飯を食べるのをマジマジと見つめた高遠は、満足げに微笑んだ。

「私の顔に、何かついてますか?」

「いえ。こうして近くで名前を見つめることが出来て幸せだなあと」

「それにしても、何で家で呑気にご飯なんか食べてるんです?明智さん呼びますよ」

名前の口から出た明智の名前に、高遠は表情を強張らせた。

「それは困ります。せっかくの二人きりの時間が台無しになってしまう」

「な、何言ってるんですか。二人きりなんてそんな…!」

「おや、緊張しているのですか?可愛らしい人だ」

そう言って笑う高遠は、とても綺麗で目が離せない。
高遠と最初にあったのは弟である一にくっついて行って事件に巻き込まれた時だった。
地獄の傀儡師呼ばれる凶悪犯だという高遠が、何故か名前には危害を加える事はなかった。
と言っても、手は出されたわけで。
何故かプロポーズまがいの事があったり、手に口づけられたり…
思い出すと恥ずかしい事ばかりで顔に熱がともる。
朝食を口に運びながら顔を赤く染める名前に、高遠はフッと笑みをこぼし名前を見つめた。

「そろそろ、私と一緒に来てくれる気になりましたか?」

「え…は?何を言ってるんですか突然!」

「突然ですか?前から言っていた事ですが。羨ましくて仕方ないんですよ。姉弟だからとずっと傍にいられる金田一君と、頼りにされている明智警視が」

高遠は、ポケットから小さな箱を取り出すと名前の傍にそれを置いた。

「名前、私と共に来てくれませんか?」

「…高遠さん」

名前が答えに困り俯くと、部屋の外からちょっと待った!!と大きな声が聞こえた。
大きな音を立てて開かれたドアから現れたのは、寝間着姿のままの弟…金田一一と、いつ現れたのかわからないスーツ姿の明智警視の姿だった。
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