お互いにクラスが違うから、帰りは下駄箱で待ち合わせをする。
早目に終わった名前は、下駄箱に背をつけて幼馴染みである高遠が来るのを待つ。

「まだかなぁ、遅いな……」

行き交うクラスメイトに“また明日”と言葉を交わしながら暫く待つと、遠くに待ち望んだ姿が見えた。

「名前。今日は遅くなるから先に帰れって言ったのに」

「よう…高遠くん…別にいいじゃん。待ってたかったんだもん!……ねぇ、その人達は?お友達?」

高遠の後ろには、同い年くらいの男子生徒と少し大人びて見える女子生徒が立っていた。
名前の言葉に、高遠は困ったように言葉を濁す。
そんな高遠に痺れを切らしたように高遠の後ろに立つ二人がそれぞれ言葉を紡いだ。

「おー!この子が噂の幼馴染みちゃん?可愛い子じゃん!高遠には勿体ないんじゃね」

「何言ってるんだ霧島。名前はそんな関係じゃないから」

高遠の言葉に、名前の胸が痛んだ。
幼馴染みという関係性が時にこんなにも残酷なものだと、初めて知った。

「俺、霧島純平!高遠の友達。よろしくね名前ちゃん!」

「名前です。よろしくお願いします。高遠くんの相手って疲れるだろうけど、見放さないであげてね」

「あはは、高遠くん凄い言われようね」

「……笑う所じゃないですよ、藤枝先輩」

藤枝先輩と呼ばれた女子生徒は、笑いながら高遠の背中を叩いていた。暫く笑った藤枝は名前を見ると優しく笑って手を差し出した。

「あたし、2年の藤枝つばき!よろしくね、名前ちゃん!」

「あ、よ…よろしくお願いします。藤枝先輩」

差し出された手を握り返せば、藤枝は満足げに手を握り“そろそろ帰りましょうか”と告げた。
帰り道、バス停までの道のりを歩く四人は、二人ずつのペアになっていた。
前を歩く藤枝と高遠の背を見つめ、ギュッと鞄を握る。

楽しそうに話す藤枝を見つめていると、胸を黒い気持ちが渦巻いた。
幼馴染みの関係を抜け出せない自分とは違う、部活の先輩。
最近の高遠は人が変わった様だった。
初めて聞く部活の話。友達の霧島くんの話。先輩の藤枝の話。
今まで人を寄せ付けず、何に対してもつまらなそうだった高遠が、いつになく楽しそうにしていて
でも、そのきっかけを作ったのは自分ではない。

それがどんなに辛いか、高遠はきっと気づいていないのだろう。
これ以上二人を見ていたくない。
そう思った名前は、嘘をついた。

「あ、ごめん!私、教室に忘れ物しちゃった」

「相変わらず名前はおっちょこちょいだね。取りに行くの付き合おうか?」

「……大丈夫。一人で平気!皆さんは先に帰っててください。また明日!」

そう言って一人で学校に戻る名前を見つめ、霧島が声をあげた。

「あ、俺も教科書忘れた!取りに行ってくるよ。じゃあな高遠!また明日教室で会おうな!」

「ああ。霧島、また明日」

そう言って、高遠と藤枝と別れた霧島は足早に名前を追った。
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