人工的に作られた光のアーチを潜りながら、片手でスピーカーのボリュームを上げる。
車内に響くクラシックの音色に、助手席に座る名前は少し緊張した様に明智を見た。
二人で食事をして、家に帰ろうと明智の運転する車に乗り込んだ。
車は、家とは違う道をどんどん進んでいく。
「明智さん、あの………今日はご馳走さまでした」
「いえ。こちらこそ、付き合ってくれてありがとうございます。遅くなってしまって申し訳ありません」
明智の言葉に、名前は驚いたように目を見開いた。
確かに、これから何処に行くか少し不安ではある。
でも、明智と一緒ならどこへでも行ける。そんな気がした。
「そんなこと!私も、まだ一緒にいたいと思ってますし。あんまり会えないから、少しでも長く一緒にいたい」
「名前、ありがとうございます」
車の時計はもう23時を回っている。
兄には遅くなるとは告げているが、恐らく心配していることだろう。
煩くならない様に、スマホの電源は落とした。
対向車のライトを何度も浴びながら、再び明智を見ると明智は視線に気付いた様に微笑んだ。
胸が熱い。恥ずかしさを隠すように視線を前に戻した。
「名字警部が心配している頃でしょうね」
明智の言葉に、名前は苦笑しながらスマホを握る。
「帰ったら、怒られそうです」
「何なら、私の家に来ますか?」
「え…」
心臓が高鳴って、再び明智の顔を見ると明智は口端を持ち上げた。
「このまま、あなたを拐ってしまっても構わないでしょうか?」
「明智さん……?」
明智は暫く車を走らせると、ある場所で車を止め名前を見つめた。
エンジンを切り、体を名前の方に向け手を伸ばした。
「名前を、好きだといったら…あなたを困らせてしまいますか?」
「そんな事……私も、明智さんの事!」
「名前……」
明智は、名前の頬を撫で顔を近付けようとするがポケットにいれたケータイが23時55分を告げ少し慌てて手を離しスーツの胸ポケットを探る。
「名前、目を閉じてくれますか?」
「え?あの…」
「私がいいと言うまでは目を閉じていてください」
明智の言葉に、名前が目を閉じると明智は呟くようにカウントダウンを始める
5.4.3.2.1………
「Happy Birthday!名前」
小さなクラッカーの音が響き目を開くと明智がクラッカーを鳴らし小さな包みをの名前の前に差し出した
「私の誕生日……?」
「生まれてきてくれてありがとうございます。 名前……もし、この想いが迷惑になるのなら……」
名前は、明智の言葉を遮るように優しく口付けた。
「私は、あなたとなら何処へでも参ります。健悟さんじゃなきゃいやなんです。今日は今までで最高の誕生日になりました!ありがとうございます」
「名前、こちらこそありがとうございます。愛しています。私の名前」
そうして、二人はどちらからともなく唇を触れさせた。
二人記念日(さて、では遠慮なく名前を拐うことにします)
(え、冗談じゃないんですか?!)