名前を追った霧島は、校門の前で泣き崩れる名前を見つけ声を掛けた。

「名前ちゃんって、嘘が下手だよな」

「……霧島くん。何か、用ですか?」

慌てて涙を拭う名前を見て、霧島は先程までとは違う、悪意を感じさせるような笑みを浮かべる。

「酷いよな。高遠の傍でずっと見守ってたのは名前ちゃんなのに。他人にも自分にも興味ない高遠の傍に寄り添って、支えていたのは名前ちゃんなのにね」

「…私、そんなつもりじゃ」

「じゃあさ、俺と付き合おうよ?」

霧島の提案に、名前は驚き目を見開いた。今日初めて言葉を交わした相手に、この人は何を言ってるんだ。
そう考える名前に、霧島はいつの間にか背後に回り耳元で甘く囁いた。

「名前ちゃんが信じてくれるなら、俺が高遠を取り戻してあげるよ」

それは、甘美な毒のようで名前は涙をこぼしその毒を飲み干した。

「霧島くんは、それでいいの?」

「いいよ。名前ちゃんの為なら、なんだってしてあげる。だかや、俺と付き合おうよ」

後ろから抱き締める様に腕を回す霧島の手に、名前はそっと手を重ね頷いた。

「契約成立って事で。これで、俺達は共犯者だね。よろしくね、名前」

「…よろしく…お願いします。霧島くん」

溢れた涙は、霧島の手に落ち冷たくなって地面に落ちた。冷たく白く光る月が二人を照らした。


翌日、高遠を迎えにいった名前は俯きながら高遠に言葉を紡いだ。

「高遠くん、あのね…明日から朝一緒にいけなくなったから」

「珍しいね。何かあった?」

あまり変わらない声で言う高遠に、名前が震える唇を開いた瞬間、肩に腕が回され明るい声が響いた。

「おはよう高遠!それに名前!」

「…霧島。おはよう」

「お、おはよう霧島くん」

霧島は、名前の肩にしっかりと腕を回し眩しい笑顔で二人に微笑みかけた。
それを見た高遠は、少し不服そうに霧島を見つめた。

「あ、そうだ高遠!俺さお前に報告があるんだ!」

「あまり興味ないから言わなくていいよ……」

「俺さ、名前と付き合おう事になったから!」

霧島の言葉を、名前は俯きながら聞いていた。近くで聞いているはずなのに、何かを通したように遠く聞こえて胸が痛んだ。

届きはしない想いなら、いっそ深い海に沈めてしまおう。
さようなら、大好きな人

死神と契約した日
(可愛い君のために、僕は死神になろう)
(大好きなあの人を振り向かせたい。その為に、私は死神と契約した)

→あとがき
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