暫くして、名前がご機嫌で教室へと戻ってきた。

「高遠くーん!終わったよ。さ、帰ろう!アイス!アイス!」

「今日はだいぶ涼しいけど…アイス食べるの?」

「もちろん!学校帰りと言ったらアイスでしょう!」

さあ、早く帰ろう!と言わんばかりに高遠に近付きカバンを持った名前は片手で高遠の手を引っ張る。

「そんなに急がなくてもアイスは逃げないよ」

「だめ、私の好きなのが売切れたら困る!」

「そしたらまた別のを試してみたら?」

苦笑しながら言う高遠に、名前は小さく息を吐いた。

「高遠君は分かってないな〜!新しいアイスを極めるより、大好きなアイスを食べるほうがいいに決まってるじゃないか!あ、でも今日はパピコがいい」

「どうしたの?いつもと違うけど」

先程までアイスについて力説していた名前は、下駄箱から靴を取り出し上履きをそこへ戻した時に思いついた様にそう言った。
高遠も下駄箱へ靴をしまいながら不思議そうに名前を見た。

「ん〜だって、それなら高遠君と半分こ出来るじゃない?」

「…」

「どうしたの?パピコ嫌い?」

名前の口から出た言葉に、高遠は言葉を詰らせる。
どうしようもなく嬉しい気持ちが溢れ出るがうまく言葉にする事が出来ない。
緩む口元を隠すように押さえていると名前が顔を覗き込んできた。

「高遠君が嫌いなら、いつものにするけど…」

「いや、パピコにしよう。僕もそれが食べたいと思ってた…」

「さすが高遠君!私達、凄く気が合うね。らぶらぶカップルっぽい!」

名前の言葉に高遠は笑みを溢して手を差し出した。

「そうだね。まだ付き合ったばかりだし名前が言うみたいに“らぶらぶ”なんじゃないかな…自分で言うと凄く恥かしいけど」

「高遠君って意外と照れ屋だよね。本当に意外」

名前はそう言うと差し出された手を取った。
二人は手を繋ぎ校門へと向かっていく。
鮮やかな色に変わった空を見つめ、もうすぐ月が出るなと空を見上げた。

「意外って…そうでもないと思うけど?」

「意外でしょう。こう怖いもの知らずの高遠君がまさかの照れ屋だったなんてみんなびっくりするよ。あ、でも私以外に見せるとみんな惚れちゃうからやめてね」

「心配しなくても、僕が好きなのは名前だけだよ」

さらりとそんな台詞を口にする高遠に、名前は真っ赤になって口を開いた。

「た、高遠君はずるい!!」

「え、何が?」

「分からないところがまたずるい!この天然タラシさんめ!!こうしてやるんだから!!」

名前はそう言って高遠に思い切り抱きついた。
高遠は、そんな名前を愛しげに抱き締め返すと柔らかく微笑んだ。

「僕がこういうことするのは、今もこれからも名前だけだから…」

「…分かってる。高遠君大好き」

「うん、知ってた」

二人は微笑んで岐路に着いた。
もちろん、帰りのコンビニでパピコを買ってそれを半分にして…

君の気持ちなんてとっくに知ってた
(半分こして食べるアイスは格別に美味しいね)
(ちょっと寒いけど…たまには悪くないかもね)

(タイトルはこちらのお題をお借りしました)
確かに恋だった
→あとがき
*前表紙次#
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