抵抗することをやめ、観念したように俯いた名前の腕を引き寄せ明智は片手を名前の頭の後ろに回すと優しく抱き締めた。
先程まで掴まれた手は、赤く型がついていた。

「…健悟さん、早く帰らないと」

「…そうですね」

名前が小さく呟くと、明智は手を離しエンジンを掛けた。
シートベルトを付けられずにいた名前も慌てて金具を止めて助手席の背もたれに背を預け窓の外をぼんやりと見つめた。
明智は、運転しながら時折名前の様子を視線だけで見つめる。


「名前、少し寄りたい所があるのですが構いませんか?」

「私は構いませんが…どこへ?」

「着いてから説明します」


そう言って、明智は車を走らせる。
名前は窓の外の景色をぼんやりと見つめながら小さく咳き込んだ。
過呼吸が落ち着いたとはいえ、暫く苦しんだのだから当然と言えば当然だろうか。
袖で隠れてはいるが、腕には爪を立てた様な痕があった。
過呼吸の苦しみから逃れる様に爪を立てたのだろう片方の腕は真っ赤に染まっていた。

「高遠と、何があったんです?」

「…期待を与えられてしまったんです。高遠さんは私の秘密を知っていて、私を…救い出してくれると」

「名前…」

名前は、視線を前に戻し両手を膝の上に握り締めた。

「幸せになんてなれるはずないって…なっちゃいけないって思ってたんです。私がこの鳥籠の中にいれば、それでいいんだって思ってました!でも…高遠さんの言葉が、とても嬉しかった。期待してしまった。全てを裏切って、自分だけ幸せになろうとした…そんな自分が許せないんです!!」

「…私では、名前を幸せにすることは出来ませんか?」

地下の様な所にでも入ったのだろうか、突然視界が暗くなり名前はびくっと体を震わせる。
明智は駐車場に車を止めると、シートベルトを外して名前の方へ顔を近づけた。

「健悟さんには…もっと素敵な方がいらっしゃいます。それに、私といるせいで不幸になさせる訳にはいきません…」

「…それが、名前の答えですか?」

「け、健悟さん…?」


明智は、助手席の方へ身を乗り出し名前の両手を掴み窓に押し付けた。
名前は怯え首を横に振りながら明智を見つめる。
明智はそんな名前に悲しげに顔を歪めると唇を触れさせた。
噛み付くように何度も何度も唇を触れさせる。
余裕を失った明智に、名前は涙を流しながら必死に顔を逸らそうとするがすぐに明智に捕まり深く口付けられる。
ようやく唇が離れた頃には、お互いに息が上がり肩が上下していた。

「健悟さん…やめてください」

「…どうして、私ではダメなんですか」

「健悟さん…いやっ!!」

明智は、シートを倒し名前の体を押さえつけると再び噛み付くように口付けた。

彼女がだんだんアイツに惹かれて行くのを、ただ黙って見ていたんだ
(いつかきっと自分の元に返ってきてくれると信じていた。でも、君はアイツの元へ行ってしまうんだね…)

(タイトルのお題はこちらからお借りしました)
確かに恋だった
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ひたすらにごめんなさい。
明智さんのことは大好きなんです。でも愛が歪んでるんです。
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