買ってきてくれたのは、スーパーで買ってきたのだろう小さなカップのアイスだった。
少し値段が高そうなのはきっと久しぶりに名前と会ったせいだろうか。
味にしてもバニラとかチョコとかではなく、ミルクティーとクッキークリームという少し小洒落た選択をしたつもりなのだろうか。
(この二つならどっちでも微妙だな…)
明智はそう思い小さく息を吐いた。
ふと顔を上げると相変わらず名前は真剣な顔で二つのアイスを見つめている。
そんなに悩むほどのことなのだろうか?
明智は不思議に思い名前に手を伸ばした。
「…健悟さん?どうかしました?」
「いや。大きくなったと思って…中学生?」
「そうですよ。まだ入りたてですけど。立派な中学生になれました」
明智が髪に触れたことに驚いた名前は、顔を上げ明智を見つめた。
明智は驚く名前の頭をゆっくりと撫でる。
「前に会ったのは幼稚園くらいだったかな」
「かもしれません。正直、私もあまり記憶になくて…おばさまに声を掛けて戴いて、嬉しかったです。健悟さんもとても素敵な人になっててびっくりしましたし」
そう言って、気の抜けるような笑顔を見せる名前に明智は胸が熱くなるのを感じ手を引っ込めた。
学校でもクラスの女子などに煩いくらいに噂をされてそういうのにうんざりしていたのに、名前の言葉は不思議と胸が温かくなった。
明智は照れくさそうに視線を逸らすと、緩む口元を手で覆った。
「アイス…早く選ばないと溶けてしまう」
「そ、そうでした!どうしよう…」
「決めきれないなら、半分にする?」
明智の提案に、名前はきょとんとしながら呟く。
「いいんですか?」
「別に構わない。名前がそれでいいならだけど…」
「ありがとうございます!じゃあ、半分個してください」
そうして、二人でアイスを半分ずつにして食べた。
幸せそうな顔は、今も忘れられないしあの優柔不断さは10年経った今も相変わらずだ。
「健悟さん、アイス食べません?」
非番で買い物に来た大型ショッピングセンターで、名前はよくCMをやっているアイス店の前で明智の袖を引っ張った。
「いいですけど、名前は選ぶのに時間が掛かりますから先に選んでください」
「す、すみません。今日はなるべく早めにします」
アイスのショーケースを見ながら、あれもいい!これもいい!と選ぶ姿は昔からちっとも変わらない。
名前出なければ付き合いきれないと言っている所だが、困る名前の顔を見るのも一つの楽しみになってしまっている。
明智は緩む口元を隠しフッと笑みを零した。
「健悟さん、決まりました?」
「私はいつも通りですよ。名前は決まったんですか?」
「えっと…どうしても決められないのがありまして」
そう言って困った様に笑う名前に、小さく息を吐いて頭を撫でた。
「仕方ありません。また半分にしますか?」
「本当ですか?ありがとうございます!!」
アイスと溜息と優柔不断(名前、頬にアイスがついてますよ)
(け、健悟さん!せめて外では舐め取るの止めてください!)