近付いて感じる吐息や、匂いに名前の鼓動は早くなっていく。
唇が触れるか触れないかという頃、高遠は明智目掛けコップの水をかけた。

「………っ!」

「明智警視!大丈夫ですか?」

「ええ。ありがとうございます」

高遠に水を掛けられた明智に、名前は鞄からハンカチを取りだし滴る水を拭う。
明智は、名前からハンカチを受けとるとメガネを取り拭き始める。

「高遠さん!何てことを……!」

「明智警視は放っておいて大丈夫ですよ。ああ、名前まで少し濡れてしまいましたね。すみません……」

「た、高遠さん!…なに…するんですか…!」

「何って、スカートに掛かった水を吹いているだけですよ?どうしました?感じてしまっているのですか?いけない人だ……」

高遠は、スカートの上から名前の足を撫でる。名前は、ひっ!と声を上げながら高遠の手を掴む。
高遠は、捕まれた手を引き寄せ名前を腕の中に抱き入れた。
微かに足が痺れていて抵抗するのがつらい。
高遠は、それを見透かしたように名前の足を撫でる。

「おや、痺れてしまいましたか?」

「高遠さん…やめてください…!」

「名前がキスをしてくれたら、考えます」

微笑む高遠を、名前は顔を赤くして睨むように見詰める。
ほら!早くしないと……と囁きながら高遠は名前のスカートの中に手を差し込もうとする。

「た、高遠さん!!」

恥ずかしさから声を上げれば、先程まで体を拭いていた明智が、高遠にボールペンを投げ付けた。
いい音をたて額にヒットしたボールペンをを握り、高遠は無言で明智を睨む。

「高遠さん、だ!大丈夫ですか?」

「大丈夫じゃありません。痛いので名前の胸で癒してください」

「ひゃああ!け、健悟さん……助けてください!」

「………名前」

高遠は、名前の胸元に顔を埋める。
高遠を引き剥がそうと暴れていると、明智は名前にゆっくり近付き顎に手をかけ唇を触れさせる。

「んっ……!?ん……ふぅ…!」

噛みつくように深く口付けた明智は、わざと音を立て唇を離すと高遠に声をかける。

「高遠、私は君に名前を渡すつもりはありませんが……たまには、名前がいかに無防備か示すいい機会かもしれません」

「さすがは明智警視。私も、あなたに名前を渡す気はありませんが、まあいいでしょう!いつになく名前も大人しいですし、いつもより興奮しているようだ」

二人の言葉に、名前は背中に嫌な汗を感じ顔が青ざめる。

「あ、あの……高遠さん?健悟さん?」

「大丈夫、こんな童貞よりもずっと名前を気持ちよくしてあげますからね」

「だから、私は童貞ではありません!それに、私の方が名前を気持ちよく出来ますから。ね?私の方が名前も嬉しいですよね?」

「え………あ、どっちも遠慮したいです」

名前の言葉は、静かな部屋に溶けて消えた。

狼まであと何秒?
(名前、私と高遠どちらが良かったですか?)
(勿論私ですよね、名前?)
(……どっちも良かったなんて口が裂けても言えません)

(タイトルはこちらのお題をお借りしました)
確かに恋だった

→あとがき
*前表紙次#
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