目の前に並べられた二人分のグラス。
注がれる赤い液体を見つめながらうっと声を漏らした。
広がるアルコールの匂いに、それだけで酔ってしまいそうな気がする。
部屋一面薔薇で彩られた部屋のベッドに腰掛けた
名前に、高遠は注いだワインを差し出した。
「どうぞ」
「あ、ありがとうございます」
ワインを渡した高遠は、名前の隣に腰を下ろすと香りを楽しみそれを口に含んだ。
名前は、高遠がワインを飲むのを見て自身の手にあるグラスを怨めしげに見つめる。
「どうかしましたか?」
「いえ……ワイン飲んだことなくて……」
「そうでしたか、それは申し訳ない。取り替えて戴きますか?」
高遠の言葉に、名前はふるふると首を横に振って袖を掴んだ。
「大丈夫……。せっかく用意していただいたので!飲んでみます」
「無理しない方が良いですよ」
「大丈夫です……」
名前はそう言ってワインを喉に流し込んだ。独特の酸味とアルコールに、眉間に皺が寄る。
体がカッと熱くなって世界が揺らいでいく。
隣にいるはずの高遠の声が何だか遠い気がする。名前は、高遠の肩に凭れ掛かると目を閉じる。
「名前?大丈夫ですか?」
「………んー……っ」
「溢すとシミになりますよ」
高遠は、自身の肩に頭を乗せて目を瞑る名前に口元を弛めワイングラスを取ると傍にあるテーブルに自分のグラスと共にそれを置いた。
名前は、高遠がグラスを置くとゆっくり目を開き高遠の腕に手を絡める。
「…高遠さん………!」
「おや、どうしました?今日は珍しく甘えん坊ですね?」
「んー………っ。いや?」
高遠は、普段では考えられない名前の行動に驚きながらも緩む口元を抑えられずにいる。
普段なら、高遠が触れようとしたら手を払ったり睨み付けたり可愛くない行動をとる名前が、今日に限ってはベッタリとくっついて尚且つ可愛らしく上目遣いで“いや?”とまで聞いてきた。
「嫌なわけない。私が、この日をどんなに待ちわびたか………可愛いですよ、名前!」
「…ん…っ…高遠さん……!」
高遠は、名前に顔を近付けると柔らかく唇触れさせた。
数回触れるだけの口付けをすると、名前は物足りないと言いたげに腕に絡めた手を離し高遠の頬を包むようにすると深く唇を触れさせる。
開いた唇から、舌が入り込み戸惑いながら舌を絡めてくる。
「……っ……名前!」
「んっ……ふぅ…っ!」
高遠は、名前の頭と首を押さえるように手を回し深く唇を触れさせる。
名前は頬に触れた手を離し、高遠の背中に腕を回すとシャツをギュッと握り締める。
「…っ…ふぁ…高遠…さん!」
「…っ……!」
1度酸素を吸うために唇を離した名前の頭を引き寄せ再び激しく唇を触れさせる。
激しく口付けながら名前の体をベッドに倒す。
酸素を吸う暇すら惜しむように唇を触れさせる高遠
が唇を離すと飲みきれなかった唾液が名前の唇を流れベッドにシミを作った。
「はぁ…っ……はぁっ…」
「すみません。つい、名前が可愛すぎたもので」
「……い…の…。高遠さんだから……うれしい」
名前は、そう言うと高遠の肩に手を触れさせ甘えるように目を閉じた。
高遠は、そんな名前の頬や額に唇を触れさせる。
くすぐったい様に微笑みながら、再び高遠の頬に手を触れさせ愛しげに撫でてみせる。
「まったく、普段からそう素直に出来ませんか?」
「素直じゃない子は嫌い?」
不安げに瞳を細める名前に、高遠はフッと笑みを溢し再び唇に触れるだけの口付けを落とす。