「名前ならば、きっと素晴らしいパティシエになれますよ」

「本当に?もし、一人前になれたら最初のお客さんになってくれますか?」

「もちろん。私の為に、甘さ控えめのお菓子を作ってくれると期待しています」

高遠に握られた手を握り返し、名前は上機嫌で高遠の胸元に顔を寄せる。
高遠は、そんな名前の髪を優しく撫でる。

「でも、あんまり甘さ控えめだと私は物足りないかも…」

「確かに、名前には物足りないかもしれませんね」

「あんまり甘すぎると飽きられたりしちゃいそうだけどね〜」

高遠は、名前の髪を撫でながら小さく呟いた。
そして何かを思いついた様に髪を撫でる手を止め名前に顔を近づけた。
名前は不思議そうに高遠を見つめる。

「高遠さん、どうかしました?」

「いえ。私はそんなに甘いものは得意ではないのですが…一つだけ好きな甘いものがあるんですよ」

「?何ですかそれ…?」

「簡単に答えては面白くないので、ヒントを差し上げましょう」

突然のなぞなぞに、名前は“えー”っと声を漏らした。
高遠は、そんな名前の言葉を無視してヒントを出す。

「まずは、そうですね…白くて柔らかいです。時々赤いですが」

「え、何ですかそれ!白いのに赤くなるって…ましゅまろは赤くないし…」

「よく眠り、よく食べます」

「え…寝る?食べる?」

高遠の言葉に、名前は更に動揺する。
白くて柔らかくてたまに赤くてよく寝てよく食べる…
お菓子のことだと思っていたのに、それがまるで生物の様に思えて頭が混乱する。
まず白くて柔らかい生物とは…それを考え始めると頭から湯気が出そうになる。

「分かりませんか?では最後のヒントです。…私の恋人です」

「……え?」

「これ以上は流石にね。どうですか?わかりましたか?」

答えは分かったが、それを答えるのが少し恥かしくてうー!と声を漏らす名前に、高遠は小さく息を吐いて名前の耳元で囁いた。

「名前ですよ……」

囁かれた言葉に、名前は嬉しさと恥かしさがこみ上げ顔が真っ赤になる。
高遠はそんな名前の姿にくすくすと笑みをこぼす。
何だか悔しくて…名前は硬く目を閉じて高遠の唇に触れるだけの口付けをした。

「名前…?」

「せ、正解したからご褒美を戴きました!!」

「…まったく。それは私の台詞ですよ」

そう言って、高遠は優しく唇を触れさせた。
大好きな人とのキスは、どんなお菓子よりも甘かった。

恋は砂糖でできている
(この甘さなら毎日でも欲しいくらいですね)
(ま、毎日はさすがに…)

(タイトルはこちらのお題をお借りしました)
確かに恋だった

→あとがき
*前表紙次#
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