名前は、高遠と初めて話をした日のことを思い出し笑みを溢した。
突然笑った名前に高遠は不思議そうに名前を見る。
「何思い出し笑いしてるんです?怖いですよ…」
「失礼ね!初めて会った頃の高遠君は可愛かったなぁって…」
「そう言う名前だって、公園で落ち込んでて可愛げがあったと思いますよ」
高遠はそう言うとシャンパンを口に含んだ。
名前は少し頬を膨らませ不機嫌である事を表す。
「何それ、まるで今は可愛げがないみたいじゃない…」
「そんな事は言ってませんが…自覚してるんですか?」
クスクスと笑う高遠に、名前は更に頬を膨らませる。
高遠は、“冗談”だといい窓の外を見た。
先程から少し落ち着かない様子の高遠に、名前は料理を口に運びながら不思議そうに高遠を見る。
「どうしたの?さっきから何か落ち着かないね」
「いえ。大したことでは…」
「気になるじゃない。私には言いにくい事?」
目を細め、高遠をじっと見つめると高遠は外を見つめながら唇を噛んだ。
その表情はどこか余裕がなくいつもの彼らしくはなかった。
確か、実習を終えて大学に戻って数ヵ月後に久しぶりにあの公園に行った時に再会した際彼に“付き合って欲しい”と言われた時もこんな顔をしていた様な気がした。
何だか懐かしいな…と思っていると、高遠がテーブルの上に小さな箱を置いた。
「高遠くん…?」
「名前に比べたら、年下で経験も少ないガキかもしれない。マジックだっていつまで続けられるか分からない、不安定な物だし…苦労をかけるかもしれません」
ポツポツと語り始める高遠は、真剣な目で名前の方を見つめる。
高遠の真剣な目に名前も少し緊張して膝の上に手を置いた。
「でも…名前を幸せに出来るのは僕だけだと思うんです。だから…僕と、結婚してください!」
「…高遠くん!…はい。よろしくお願いします!」
高遠は、机に置いた箱を開ける。
そこには、キラキラと輝くダイヤの付いた指輪が入っていた。
名前は高遠の言葉と指輪を見て込み上げてくる物を感じ両手で口元を覆った。
泣きそうになりながら“はい”と返事をする名前の手に高遠はその指輪をはめた。
「なるべく、苦労させない様にします」
「…何言ってるの。私は、たかと…“遥一”が居てくれたら幸せだからそれでいいの。苦労するとしても、二人で一緒に頑張っていきましょう?」
「名前……!!出会ってくれてありがとうございます」
高遠は、名前の両手をぎゅっと握り締めた。
名前も、高遠のぬくもりを感じ優しく微笑む。
「こちらこそ。出会ってくれて、私を選んでくれてありがとう!」
本当はずっと不安だった。
どんなに頑張っても埋められない歳の差。
いつまで経っても子供扱いで、彼氏としても役不足だと思っていた。
随分長く付き合っているのに、そう言う話はまったくないし…
だから、勇気を出して言ってみた。
もう子供じゃないから…僕が必ずあなたを幸せにしてみせますから
そろそろいい頃合だと思いまして(そうと決まれば明日にでもご両親に挨拶を…!)
(ちょ、ちょっと待って!もう少し余韻を味わってからでも…!)
→あとがき