あの頃はピュアでした
わっと感情の儘に刑部の膝に突っ伏す。じわじわと感情の高ぶりに伴い瞼が熱く、触れる布部分が湿ってきた。
「おお、よしよし、泣くな。ぬしの不幸は三成の不幸よ」
「…誰の所為で泣いてると思ってんの」
「ぬしの見目が悪い」
「そんなわけあるかー!」
「この兄様と同じ銀髪も、兄様から贈られた着物も! 全部全部、兄様が「きれい」て言ってくれたんだから悪い訳ないもん!
調子に乗って伸ばしたら腰超えちゃったけど…。色は抑え目なのに模様が無駄に華美だけど……うん、キニシナイ!」
若干ズレた答えを力説すると、ぺいっと後頭部を叩かれた。…地味に痛い。
私物らしい私物を持たない兄。
金も名誉も部下もいらぬ・興味が無いという兄が態々選んで下さった着物は、毎回無駄に華美である。
…兄様の給料、大丈夫?
手渡される度に嬉しさが込上げるけど、本当は男の子なので内心複雑なのです。
…喜ぶと嬉しそうにしてくれるし。兄様、あんまり笑わないから超テンションが上がるんです。うひょーって。
(実際は三成に大谷が「これはどうだ」「貴様の好きにしろ」と返す会話がされて選ばれた物だが、真澄は知らない。
こういう物に詳しく無い三成には、大谷が選ぶ物に間違いが無いと思っている)
「でも、…でも僕は今、過去の自分にもっと突っ込めと言ってやりたい…ッ!」
涙声で猛然と後悔。
刑部の適当な言い訳に納得した、幼い日のピュアな自分よ…!
もーちょっと良く考えて欲しかった……兄様が女装で育つなんてありえないし!
まえ|もくじ|つぎ