あの子はどこ


島へと下りたネッドはすぐに船を手配した。
丁度良く航路をさかのぼる商船が積み手を探していたとは運が良い。そこでしばらく世話になる。

マルコの所でニュース・クーのバックナンバーを読み漁っていたネッドは、今ローがいるであろう航路を大体予測できていた。
所持金は限られているがしばらく食いつなげる位はある。
ローのこと以外では仕事漬けだったネッドは物欲に乏しく、雨風さえ凌げて身体が動ければ他は何でも良いと思う奴だ。

島からの船が無い時はまた無茶をした。
こう言う時こそマルコのような飛行能力をもつ者が羨ましくなるが、生憎とネッドには悪魔の実を食す予定は無い。

街を歩くときは白いコートを纏い、ローの行方を捜して情報を求める。
ときには海兵の格好をしたネッドに助けを求める島民に乞われ、命知らずなルーキーに灸を添えた。
ネッドは急いでいるが頼まれれば断れる性格でも無かった。そこまで非道ではない。


アラバスタでの内乱が新聞の一面を飾った頃、ネッドはある話を耳にして直ぐさま島を発った。

王下七武海、サー・クロコダイルの称号が剥奪された。
これからまた騒がしくなる海にネッドの影が映る。
空を駆けるネッドはふとクロコダイルの葉巻を思い出し、そういえば長くそういった趣向品を口にしない自分に気付く。
ネッドが唯一嗜むものは煙草くらいで、思い出して取り出した箱の中身はとうに湿気っていた。少し残念に思う。

煙草のことはともかく、ネッドは少し乱れた息を整えるために小さな街へと下り立った。
ネッドが噂を聞きつけて目指す島はまだ先だ。
軽く食事でもしておくか、と脇に抱えていたコートを羽織ると寂れた風の通り抜ける屋並みを歩く。

ぽつりぽつりと白壁の家々が雪に埋もれる街。
襟を少し立てる。冷たい風が首筋をなでた。
足首まで届く雪から視線を上げ辺りを見渡したネッドは故郷の冬を思い出し瞳を眇めた。
あの日の朝はもっと寒かったはずなのに。

小さな街でたったひとつの食堂を捜し当て、ネッドは扉をそっと押して入る。そして、店内を見渡した。

オレンジ色のツナギが目に飛び込む。
…そうか。この街には白クマがいるのか。

過去未来

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