02


「……おいバニー」
「僕の名前はバーナビーです。なんですかおじさん」
「なんですかってお前それ」

「なぁーん!(おい、それって言うな、それって!)」


アポロンメディア、ヒーロー事業部内。遅れて入ってきた男が驚きに口を開いた。


「言っておきますが僕の意思じゃありませんよ。何度下ろしてもまた上ってくるので諦めたまでです」

マウスを操作しながら溜息を吐いたバーナビーの膝には黒い毛玉。
丸くなって尻尾をだらりと垂らし、時折思い出したようにぱったん。
それをひょいと持ち上げて床に下ろすと、にゃ、とひとつ鳴き、たん、と床を蹴った。

……膝にまた毛玉が帰って来た。

ふんと鼻を鳴らして丸くなる姿はとてもふてぶてしい。
バーナビーはまた一つ息を吐いた。ほらね、と。


「俺には冷たいのにバニーには膝を許すってどういう事なんだクロちゃん…!」
「耳元で喚かないでください。それに、僕だって別に許している訳ではありません」

ちょっとした漫才に聞こえないでもない掛け合いが頭上で交わされる。
うるさいなあと顔を上げ、抗議の意味を込めて尻尾を膨らませた。これじゃあ寝ていられねえだろうが。

「ぅなぁ…(おい、お前の相棒だろ? 何とかしろよ)」

俺が膝を占領している青年にも訴えてみるが、視線を寄こされただけで終わった。
少し手が震えてる気がするが、怒ってんのか? だったらごめんな。だからってどかねえけどよ。


「それにしても、この猫は何処から入って来るんですか。外に連れ出してもまた戻って来るなんて、おかしいとしか思えません」
「考えるだけ無駄だぞバニー。俺がTop MAGにいた頃も普通に出入りして菓子食ってたぞ。あと、たまにトレーニングルームにも居る」
「……は?」

虎の言葉にバーナビーが眉を寄せる。

「昔っからそうなんだよなあクロちゃん。俺には全然懐いてくれねえってのによう」

口を尖らせた虎がぶちぶちと文句たれ、チチッと舌を鳴らして指で招く。興味なんてないね、とそっぽを向くと情けなく眉が下がっていった。……お前も懲りないよな。


「なぁー(別に行きたいとこ行ってるだけだぜ? 俺を見逃す警備がざるなだけだ)」

レーダー、センサー等には探知されにくい、スパイだったらこれはお得だなーというステルス機能付きNEXTの俺だ。
監視カメラに映ったって見切れる仕様もな。

でもなー、今は猫だしなあ。
不法侵入くらいにしか使い道ねえよ。


ごろごろと膝の上で毛繕いを始めた俺にバーナビーがもの言いたげに視線を寄こしてきた。見上げると直ぐに視線を逸らしたので顔を擦り付けてやった。

別に、膝を借りているうちは撫でられてやらんでもない。

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