分岐点 extra

深海魚の肺呼吸


瞼を押し上げると薄暗さの中で青白い光が瞳を覗きこんだ。
月の残光がカーテンの隙間から室内を照らし薄闇をたゆたう。
まるで水の中にいるようだ。と、水底から水面を見上げる心地に身を任せたまま烏木の瞳をとろめかせ、瞬くごとに光を閉じ込めていく。

夢を見ていた。
お伽話のような、絵本のような夢を。
深い水底に沈む大樹の根元で美しい夢を見た。

螺旋状に幹を絡ませどこまでも伸びる大樹。
根を張らす星屑を散りばめた砂地が柔らかな光を織りなすが、浮かび上がらせた輪郭を溶かしてしまうほど水底の闇は深い。
蛇が赤い舌をチロリと出し、根を齧るのをやめて鎌首をもたげた。
太い幹の足元でゆらゆらと揺れる黒髪を漂わせたまま佇んでいた一人の少年を見つけた蛇は、俯く彼の元へ果実を一つ差し出した。

『おいしいから、たべてごらんよ』

両手で恐る恐る少年が受け取り微笑みを浮かべると、蛇が丸い目をじっと凝らして見上げ銀鱗の四肢を震わせて、はやく、はやくと少年を急かす。
シャクリと瑞々しい音を立てて一口齧れば少年は粘土の心に命を灯し、二口齧れば愛に満たされた。
いつの間にか蛇は姿を消し、大樹の根元には少年が一人だけ。
ふと、彼は初めて寂しいという感情が芽生え遥か彼方の水面を想う。
果実を口にすることで粘土の心を失った彼は、底を蹴ってふわりと浮上した。
星屑の煌めきを反射させた水面に逆さまの景色が写り込み、近づく、ゴポリと唇から息が生まれる。
手を這わせると同じ顔が此方を覗きこんでいた。

蛇は彼の過去で、渡した果実は恋心だった。


***


明け方よりもかなり早い時間帯に目覚めた俺は、いつも通りの全く動かない頭をかなりの時間を掛けて覚醒を果たした。
先程まで見ていた夢が現実との間を阻む。

夢は自身の記憶に基づくストーリー。
昔、そう聞いた事があったが本当なのだろうか。
それにしてはまあ随分とロマンチックと言うか空想的ってゆーか…意外と俺の内面はああいう感じなの、か?
完全覚醒とはいかないのに考える事を止められない。
上手くまとまらない思考を抱えながら夢をほどいた。

粘土で出来ていた俺の心を捏ねて手足を作りだしたのは間違いなく、セブルスだ。
幼い彼が俺に愛を与える喜びを教えてくれた。
たとえそれがImprinting、刷り込みと呼ばれるものであろうと。
自分から欠けた彼を求める心は自覚する前から俺の心に隠されていたものだ。
愛しい弟に全ての糸が絡まる。
てかアレ、ユグドラシル? 世界樹? その根元の蛇って言ったらニーズヘッグしか浮かばねえけど。
いつか彼を水底に引き摺りこむという暗示かも知れん…まるで水魔の様だな。
大樹の根元に腰を下ろし読書にふけ込む穏やかな一時とかなにそれ幸せ。
あっ、泳ぎを教えるにしても俺も泳げねえ。どうしよう。

最終的にセブルスと一緒に昼寝したいという願望の表れでも良くないか――…しまった、考えている事がバラバラ過ぎて別方向へ行った。
占い学は得意じゃなかったし好きじゃなかった為、俺は一端思考の外へ放り投げた。

「(…あれ? そういや俺、いつの間に寝たんだっけ)」

ベッドの中で投げ出していた手足を伸びをする猫の様に広げ、くありと欠伸を漏らして漸く自分の格好に気がついた。
…見覚えのあるナイトシャツを自分が着ている。
大人用のそれはダボダボ過ぎて手足が全く出ないし肩もずれ落ちて剥き出しだ。
袖を鼻へ近づけると予想通りの匂いが香って――瞬時に眠る前の出来事を思い出し、顔が発火するのではないかと思う程熱くなった。
NO! なんで今まで忘れられてたんだ俺ってやつは!!

「(そうだった。セブルスに…あらゆる意味で丸洗いされてしまったんだったーっ!)」

俺は心の中で思いっきり叫んだ。
あの家の匂いがついた衣服も、ルーピンが触れた俺も、怒れるセブルスによって全て洗濯されてしまったとなればこれは当然の叫びである。
途中、予想外の事故があって真面目を発揮したセブルスによる性講座に発展してしまったので尚更。
…いや待て。真面目か? あれは真面目に寄る行動か?
その割に手付きが大層いやらし――ああ、駄目だ思い出すんじゃねえよ俺! ちくしょう生々しいわ!

「(うっ……くっそ! 分からない。分からん。セブルスの真意が掴めねえっ)」

強烈で刺激の強過ぎた体験に、出口の見えない迷路にひょっこり迷い込みそうになる。
いや、もう既にスタートラインには立ってる状態だがな。
今までで一番、大人としての彼を見せ付けられた気分だ。

やり場のない羞恥心に温かな枕を引き寄せて噛みつく。
うーうー唸りながら暫くカプカプと歯を立てていたら枕が「痛い」と言ったのに俺は驚いて、枕だと思い込んでいた腕から顔を上げた。
なんと混乱し過ぎて真横にセブルスが寝ていた事に全く気がつかんかったらしい。不覚。
気まずさに若干視線を逸らしながら、俺は薄暗い中に浮かび上がる顔を見上げた。

「おはよ、う?」
「……まだ夜明け前だぞ」
「うん、でも目が冴えちゃってさー」

俺の言葉に目を閉じたまま気だるげに答えたセブルスは薄目を開けてまた閉じた。
眉間の皺を深くさせ、瞼を擦ってもごもごと何かを言っている。
いやいや全く聞きとれないよセブ。
つーか、なにその仕草可愛い…きゅんとした。
ドキドキ煩い心臓を抑えながら耳を近づけて聞きとろうとすれば、寝返りを打ったその胸に押しつぶされる。
背に回った腕のポンポンと宥めるような動きに、ああ寝れってことか、と理解した。
理解はしたけど寝れるわけがねえじゃん。
てか、寝室は別にするって言ったのはセブなのに何普通に隣で寝てんだよ。嬉しいけど。忍び込む手間が省けたぜ。

「(…心臓が煩いの、聞こえてんじゃないかな、これ)」

それはちょっと困る。
眠かったからかセブルスは普段通りに見えた。
常通りの自若とした素振りさえ、今は少し恨めしい。
動揺するとか照れるとか、そういう態度を示してくれたら良いのに。

――もっと俺を見てくれたらいいのに。


何故逸る。
自分を叱責する内なる声が飛ぶ。
どうせ俺は直ぐに過去に戻らねばならない。
気持ちを育てる時間ならばそれこそたっぷりあるのではないか?

ふと、あの少年と蛇の夢が思考に滑り込む。
この想いを抱えたまま幼い彼の成長を見守り、知恵を与え、果実を目の前に差し出す蛇が俺に重なった――あの夢の様に。
それはなんと甘美で魅力的なのだろうかと、芽生えた想いに身震いする。
俺はもうこの腕に包まれる心地良さを知ってしまった。
一人で答えを出せないならばいっそ、同じステージに引き上げるべきだ。

「(やだな…なんて欲張りでどうしようもねえんだ)」

行き着いた考えにふっと自嘲気味に笑う。
そんな自分を丸めた羊皮紙の様にゴミ箱に投げた。
一人で思いつめるとろくな事考えねえな、俺は。
吐き出した重い息がセブルスの胸へと落ちる。
包み込む体温は大切なものを守る檻の様に俺を閉じ込めたままだ。

「あっ、セブ、セブー。ちょっと起きて。重大発表でーす」
「……なんだ…」
「おなかすいた」

そういえば俺、夕食を食べ損ねてたんだったわ。
今まで考えていた事をおくびにも出さずに、俺はにこりと笑いながらセブルスを揺り起した。


早過ぎる時刻に叩き起こされたセブルスはかなり不機嫌顔だ。
時間を確認してまた一つ眉間の皺が深まる。
温めたスープとパンを乗せたトレイを浮かせながら寝室に戻って来た彼は一言「食べろ」と告げて背凭れの無い小さな椅子に腰かけた。少し窮屈そうである。
…不機嫌ながらもちゃんと忘れずに袖を捲ってくれたけどね。

膝に乗せられた温かな食事に歓声を上げて俺は直ぐにかぶり付き、ジャムがたっぷり塗られてたパンを無心で咀嚼していった。
フッ…俺の好みを分かっているじゃあないか。
流石は俺の愛しい弟。
大変美味しく頂いていると空腹を訴えていた腹は次第に唸るのを止めていた。
ああ、何故寝室で食事を取るかって?
そんなの言わせんなって、……ただ両脚が、特に付け根あたりが筋肉痛な事と関係してんだけどな。(つまり普段酷使しない筋肉が筋肉痛になった…)
体力もそこまで回復してねえし。

満面の笑みで頬張る俺を見ながら、自分の分の紅茶を黙って啜るセブルス。
櫛の通って無い頭はボサボサで目の下には隈が浮いていた。
普段のビシッとした様子とかけ離れた姿は寝不足に因るものか。
申し訳ない気持ちが浮かび上がるが、しかし俺は更に彼を困らせる事を今から口にしなければならぬのだ。

「ねえ、セブルス。お願いがあるんだけど」
「今度は何だ。菓子なら与えんぞ。今の時間帯からそんなものを欲しがるな。ああ、薬を飲むのも忘れるな。それから「パンツ履きたい」

ブッと可哀そうなほど咽て、セブルスが気まずげに視線を逸らした。
あーとか、うーと言葉を探して咳払いを一つ。
カップを置いて腕を組み、溜息を吐いて黙ってしまった。
彼なりのこれ以上あまり聞かれたくないというサインである。
ふむふむ、なるほど。
やはり流石に眠ったままの俺にパンツを履かせる行為は躊躇われたのか…そうだよなー、そうだよ。想像するだけで変態チックだし。
逆の立場なら俺も困ると思…うん、たぶん、困る? かも。
セブルスも平静を装っていただけなんだと今の行動で悟り、俺はパンの残りを全て口に収めた。
パンツレスな俺がパンを頬張るとか別に狙ってねーし。


キレイに完食すると空になった食器を魔法で片付けた。
俺が魔法を使った事に一瞬眉を寄せたセブルスにヘラっと笑う。
すると徐に立ち上がった彼は一端部屋から出て行き、直ぐに戻ってきた。

「セブ、それパンツじゃないよ」
「……そう見えたのならばお前の目がどうにかなってしまったと考えねばならん。ああ…なるほど、珍しく早起きなどするから何も見えんのだな。かわいそうに」
「やだセブったら心底可哀想な人を見る目なんてすんなって。朝から辛辣ー」
「そうさせているのはセネカだが。違うか?」
「う、お、セブルス、本の角すげえ痛いです。グリグリしないで旋毛からへこむへこむ! …さっき魔法使ったこと密かに怒ってるでしょそれ絶対」
「フン…、お前の衣服はハウスエルフが洗濯に持って行ったままで未だ届かん。我慢しろ」
「えーそれまでパンツレスですかよ…てか、ハウスエルフ居たの」
「暫しの間ホグワーツから借りた。ダンブルドアの意向でもある」
「ふーん」
「それよりも…」

ずいっと俺に手渡されたのは一冊の分厚い本。
本の角は凶器になるんだよ、と恨めしげに呟きながら箔押しされた題に目をやった。

「『上級! 人体に纏わる全ての仕組みをこの一冊で〜変身術に役立つかもなあれこれ〜』??? なにこれ…」
「568ページから読むといい。全てでも構わん。…これで理解が出来ぬ場合のみ質問も受け付けよう」
「あー…なるほど」

指定されたページを開いてセブルスの言わんとする事を理解。
所謂「生理現象」についての詳細がびっしりと書いてあったのだ。
つーか、えらい詳しい本だな。挿絵も良い感じでグロい。リアル。
つまりはお風呂場での一連のレクチャー行為・男の生理現象を言葉での説明を極力避け、本で理解させようって腹だな。…ハハーン、逃げたなセブルス。
これは質問にはこ難しい専門用語を交えて返してきそうな雰囲気だ。
俺だから良いものの…普通の子供ならば先ず理解など出来ないだろうに。
それも狙いの範疇だろうか。

じとっと視線を送るとセブルスは顔ごと逸らした。
先ほどと変わらず気まずげである。
心なしか耳も赤いような…。
俺の視線を振り払うよう、ゴホン、と大きく咳払いをして背を向けたセブルスは目の前で着替え始めた。二度寝をする気も失せてるらしい。
慌てて俺は視線を本へと落とし、衣擦れのする室内で驚くほどの速さでページを捲って文字を追う事に専念したのである。

何度も拝んだことのある生着替えも今の俺にはかなりの毒。


数時間後。


すっかり日も昇り切り普段なら朝食も食べ終わる時間帯に読み終わった本を閉じた。
わお、うっかり全部読んでしまった…。
1000ページ以上は軽くある分厚い凶器を膝に乗せて遠い目をする。
速読で全体を把握するだけでもかなりの時間がかかってしまった。
いつの間にかセブルスも居ないし。
ああ、そういえば本日のセブルスの予定聞いてなかったぜ。

本をベッドへ置き、重みで痺れた脚を擦りながらそろそろと下りた。
靴が見当たらないので裸足のままナイトシャツを引きずる形で部屋から出ると、1階から上って来た香りに惹かれて転ばないよう気を付けながら下りていく。
おやちょっとコレ、ダンブルドアな気分じゃね?
長い裾を引き摺る感じがだけど。

「おっと、セブルス発見」

居間で一人用の肘掛椅子に座り新聞に目を通す姿を見つけペタペタと傍まで歩み寄り、飲みかけの鮮やかな濃い赤に目が止まる。
やっぱりこの匂いはダージリンか。
ベルガモットの香りを肺に吸い込み目を細め、自分も欲しいと言う前にもう一つカップが出現していた。

「ありがとセブルス。以心伝心ってやつだねー」
「もう読み終わったのか」
「うん、全部読んだ」
「…全部だと? あれをか?」
「そう全部。うっかり最初から最後まで読んじゃった」

なんですかその疑いの眼差しは。失礼な。
自分が座る椅子を探してキョロキョロしながら答えている傍でティーポットがひとりでにカップへ注いだ。
そして自動投入される角砂糖二つとたっぷりのミルク。
本当はこれ、ストレート向きの茶葉なんだけど(実際セブルスはそうしている)俺は全く気にする事も無く全部同じ飲み方を通している。
細かい事は気にしないに限る。
てかセブルス、新聞に顔近づけ過ぎだ。
文字が見えにくいなら眼鏡でもかけりゃあ良いのに。絶対似合うぜ。

「ちょいとセブルスさん」
「なんだ」
「僕が座る椅子がありませんけど。あと、いい加減新聞から顔を上げてよね。人とお話する時は目と目を見て! …なんちゃって」
「人の事など言えた奴か。セネカとてするではないか」
「じゃあお互い様って事で。…お、良い事考えた。はいはーい、ちょっと新聞どけてね」
「…………おい」
「ん? なあに?」
「何処に座っている」
「セブルスの脚の間だけど?」

よいしょっと両脚の隙間に無理やり尻を押し込めて座りカップを手に取る。
沈めたミルクを手で回す様に広げながら背もたれに寄り掛かった。
背後で新聞がグシャッと潰れる音がしたけど気にせず一口啜る。
うん、うまい。
背もたれから大きな溜息が聞こえ新聞が引き抜かれると「よし勝った」なんて俺は密かにほくそ笑んだ。

暫くそうしてティータイムを楽しむ。
その間、さてどう切り出したものかなんて考えていると、意外にも背もたれが板についてきたセブルスの方から切り出してきた。
答え辛いこと聞いてやろうと思ってたのに先制攻撃してきちゃったか。

「それで?」
「うん?」
「察しが悪いな。私が本を渡す時に言った言葉をもう忘れたか」
「あー…そうでしたね。うーん…」

飲み終わったカップを置いて顎に手を添え考える振りをする。
つーか、さっきから背後の背もたれセブルスがソワソワしてる気配がするけど…そんなに警戒するなら初めから自分でいえば良いのに。
――そこで俺はピンと閃いた。
もうダンブルドア並みに悪戯を企む子供みたいに笑う。
そうだ、とっておきがあるじゃないか。

「はい! 質問ですスネイプ教授!」
「ぐっ……けほっ、なんだいきなり」
「や、質問するには先ず形からかなと思って」
「ほう。では聞くが、セネカは質問する際先生を背もたれにするのかね」
「何をそんな馬鹿な。セブルスは僕の弟でしょ」
「…お前は……続けろ」
「あのすごいちゅーはどこで覚えられるの? あの本には載ってなかったよ」

意気揚々として言い、首だけで振り返るとセブルスは顔を手で覆い天を仰いでいた。
その様子にニヤリと口の端を持ち上げどう切り返してくるのかを待つ。
流石のセブルスもまさかそんな事を聞かれるとは思ってもいなかった様だ。
手のひらの間から唸り混じりで絞り出すような声が聞こえた。

「…そんなもの、聞いてどうするのだ」
「え、勿論覚えるけど?」
「……覚えて一体どうするつもりだ」
「うーん、セブルスに還元する」
「は?」
「戻ったら、アレでちっちゃいセブのファーストキスを奪ってやろうかと思って」
「……………………」
「セブ?」

長い長い沈黙が落ちた。
あまりにも長過ぎて此方が心配になる位。
おいおいそんな固まらなくとも…いや、当然の反応なんだよなあ。
何せ「お前の初めてを凄いキスで奪います」宣言なのだから。
だって、どうせなら忘れられないものにしてしまおうかと思ってさ。
唇への初キスって何時までも記憶に残るらしいし。
しかし沈黙が本当に長い。
次第に焦りを感じて「セブ?」ともう一度小さく呼びかけると、甚く憔悴した様子で覆っていた手を退かせた。
「そういう事か…」と小さく独り言ち、何やら納得がいったという顔をして頷いた。

一体何がそういう事なんだよ。

頭の中が「?」で埋め尽くされる俺。
考えの読めない黒い目がそんな俺をじっと見下ろす。
穴が開くんじゃないかと思う程見つめられ、もぞりと尻が落ち着かなげに揺れ――ハッと見上げた体勢と顔の角度に記憶が揺さぶられた。
今俺はセブルスの前に座っている。
コレって…昨日の浴室で洗われた時と同じ位置じゃねーか!

「顔が赤いぞ」
「え、は? そんなこと無いし」
「何を考えた」
「べ、別に…」

うろうろと視線を彷徨わせて前を向こうとしたら素早く顎を掴まれ元に戻される。
ちょ、今首がグキッていったぜセブルスよ。

「つくづく思う。お前は本当に性質が悪いな」
「凄い言いがかり…」
「本当の事だろう? 一つ、教えてやろう。セネカ、お前のそれは有言実行される」
「へ? ――んぅんん?!」

言い終わるや即、唇に柔らかいものが触れていた。
それがセブルスの唇だと理解し散々吸われて離された時にはもう息も絶え絶え。
ぐったりと凭れる俺を意地の悪い顔で見ながら「思う壺というのも癪だが、相手がお前だと抑えるのも馬鹿らしく感じるな」とセブルスが呟き、口元を上げていた。

セブルスが俺の気持ちに種を蒔く。
俺と同じく彼が、俺の気持ちを育てたいと考えていた事も知らないで「恥ずかしいから早くパンツ下さい」うわ言のように呟いていた。

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -