分岐点 extra

俺の弟が××な訳無い


未来。
時の経過を三つに分けた過去・現在・未来の内、これから来る時の事。
以上、辞書を参考。
つまり明日であろうが明後日であろうが未来は未来だ。

「え……因みに、何年後? セブルス…何歳?」
「本人から聞いた方がショックが和らぐと思うんじゃがのう」
「それはその方がショックですよ!」
「ほっほっほっ、確か今年で35歳を迎えたはずじゃ。勿論、君も」

なんと、二人で立派なおっさんになっていましたとさ。

頻りと一人で「うわーうーわー」やら「サプライズどころじゃないよ…」とぶつぶつ呟く俺にダンブルドアは悪戯が成功した子供の様に笑ってる。
貴方はそうやって俺を驚かすのが本当に楽しみなんですよねほんと!
いつもは軽くかわすダンブルドアの弄りに、セブルスではなく俺が引っ掛かりまくっている。
突然未来に飛ばされていたという事実よりも「セブルスがおっさん」という事態に狼狽しまくりだ。

数時間前までは七歳の可愛い小さな弟。
今は大きな…自分の父親並みに歳を取った弟。

ああっ…どうしたらいいんだ!
俺の知らない間に脛毛だってきっと生えてる…!(混乱中につき意味不明)
でも俺の愛しい弟ならつるつるかも知れない望みは捨てるな!(錯乱中につきいmy)
すまない、セブルス。
俺はもうショックで卒倒しそうだ。
……此処で力尽きたらダンブルドアの枕元に化けて立ってやる。

取りあえず俺は力いっぱい拳を振りかざし、

「俺の可愛い盛りのセブルスを! 返せ―――!!」

と、重大な問題は其処じゃないと思われてるのを知りながら叫んだ。
いやいや、俺にとってはそこが一番の問題ですよ。

***


「そろそろ落ち着いたかのう」
「……あ、はい、取り乱してすみませんでした」

項垂れて肩を落とし縮こまる。
反省し切りで落ち込む俺はもう体力ゲージが点滅状態だ。
直ぐにでも寝直して目が覚めたら「…という夢を見たんだ」なんて言えるようなダンブルドアの腕によりをかけた悪戯だったらどんなに気が楽になったか。
否、それはそれでムカつくのだが。
判明した途端にあの長い髭を固結びにしてやる。

「それでは現実問題に向き合いましょうか」
「なんじゃ、今更な気もするのう」
「そこは突っこみ無しで願います。後生ですから」

緊張を取り戻そうと真面目腐った物言いで仕切り直した俺にダンブルドアが混ぜっ返そうとする。
間を置かずに断ち切った俺に、彼は悲しそうな顔をしたがもう騙されん。
やはりどんなに時が経とうとも狸爺は狸爺だ。

「それで…僕はどうしたら良いですか? このまま未来に留まった儘とはならないんでしょ? 僕自身から何か聞いていませんか?」

先程ダンブルドア本人が「君も」と言ったからにはおっさんな俺もこの時代に存在するのだろうと推察する。
という事はいずれは元に、過去に、戻れるのだろう。
落ち着いてみれば自ずと答えは導きだせる。
(先ほどの騒ぎ様は最早ノーカウント扱いだ)
俺の事だ。もしそうなら一言ぐらいダンブルドアに報告してはいる筈だ。
淡々と考えを述べるとダンブルドアは俺の言葉に笑みを深くした。

「その通りじゃ。やはり君は賢く理解も早い」
「…僕を褒めるアルバスに裏があるとしか思えませんけど」
「信用がないのう…わし、悲しい…」
「信頼はしていますけどね。やめて下さいよ落ち込むの。態とらしい。…で、どうなんですか? 僕は貴方の指示に従いますよ」
「ほっほっほっ…その話をするには、先ずは役者が揃わねばの」

ダンブルドアの言葉に眉を寄せる。
勿体ぶるなんてまた何を考えているのか。
少し待ってはくれぬか、という彼に従い紅茶のおかわりを啜って待った。
遠慮なく茶菓子を要求するとチョコクッキーが出てきたのでありがたく頂戴する。
うん。流石はダンブルドアが薦めるだけの事はある。
口の中でほろほろほどける甘さが俺の好みにベストマッチだ。

――暫くして校長室のドアをノックする音が響いた。
ダンブルドアが入室の許可をして俺は誰が来たのだろう? と首を傾げた。
俺の腰掛けるソファは扉を背にして配置されている。
つまり振り向かなければ何も見えない状態にあった。

カツカツと硬質な足音が一定のリズムで此方に近づいてくる。
足運びは堂々たるもの。
鼻歌でも歌いそうな目の前のダンブルドアとは全く違う。
恐らくは成人男性。
目を閉じ耳を澄ませ、足音だけで以上の情報を察すると真後ろで急に途絶えた。

「ダンブルドア。緊急の呼び出しを受けて参ったのですが何用でしょうかな」

低いバリトンの声。
耳に心地良いそれは俺の心臓をドキリと跳ねさせた。
声色は無機質だったがどちらかと言うと不機嫌な色合いが近い。
これが甘さを含んだらさぞやモテるだろうに。

「おお、すまんのう。任務中に呼び出して」
「一段落ついた所だったので問題はありません。ですが……これはこれは、来客中でしたか」
「彼の事ならば心配には及ばん」
「……」
「君にとってもこれは並々ならぬ関心のある話題じゃとおもうのだがね――――セブルス」

セ ブ ル ス だ っ て ?!

勢い良く立ち上がった俺は直ぐ様背後を振り返った。
そこにいたのは黒い人。
全身を黒で統一した長身が此方もまた硬直したように突っ立っていた。
少し癖のついた重たげな黒髪は肩まで伸び顔を縁取る。
肌の色は土気色に近いが俺とて同じようなものだ。
真っ黒な瞳が今は大きく見開かれ、覗き込めばきっと、同じように驚いた表情の俺が写っている事だろう。
眉間に皺がくっきりと刻まれていて、最早癖にでもなっているのか取れなさそうだと片隅で思う。

間違いない。
この人はセブルスだ。
確かめるまでもなく、全身の細胞が煩いくらいに片割れの存在に歓喜している。

「セブ、ルス…?」

喘ぐように気がつけば呼んでいた。

「セネカ…か…?」

きっと同じような心境なのだろう。
ぎこちなく俺が頷くと眉間の皺が一本増えた。

じっと黒い眼が頭から足まで俺の上を滑ると瞼を伏せる。
セブルスは片手で顔を覆い力無く首を振り「……またか」と呻くように呟いた。

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