分岐点 extra

You don't know how anxious I am about.


聖マンゴで迎える二度目の誕生日が過ぎ去った。

大の甘い物好きの俺は癒者のお姉さま方から頂いたケーキや糖蜜パイに歓喜の声を上げてしまい、セブルスには大分呆れられてしまった。
セブルスだって甘い物は別に嫌いじゃ無いくせに…。
むすっくれた顔で頬張るセブルスが可愛いので言わないけど。
もう少し美味しそうに食べたらいいのにね。
数あるセブルスの魅力の一つは素直じゃない所なんだけどさ!

あれからもダンブルドアは何度も見舞いに訪れてくれている。
そしてなんと意外にも、あのアラスター・ムーディまでがたまに顔を出してくれていたのだ。
ほぼ顔を見るだけの状態に近い見舞いだが、初めの頃よりは友好的になれた…とは思う。
監視対象ぐらいにはされているかも知れないけど。
話すうちに「もうコイツに遠慮いらねえぇ!」となり、呼び方もアラスターに変えてみた。
(そして何というか予想通りというか、ムーディとセブルスは反りが合わなかった……俺のいない間に二人に何があったのやら)

喜ばしい事に右腕は殆ど自由を得ていた。

退院までの道が見えてきてからは衰えた体力・筋力を取り戻すべく病室からもちょこちょこ出歩いてもみた。
もちろん、その傍らにはセブルスが付き添ってくれる。
流石は愛しく可愛い俺の弟。
手を繋いで歩いていると優しい気持ちになれ、俺の心は弾む。
そして走ろうとして怒られる。
最早セブルスにとって俺を兄と思っていてくれているのか甚だ疑問に思うこの頃だ。

でも最近は…少し変だ。
俺ではなく、セブルスが。

変わらない日々の中、視線を感じて顔を上げるとじっと此方を見つめるセブルスと、よく目が合う。
真っ黒な瞳は一見して何の感情も窺えないが見つめ返して微笑むと、大きく揺らぐ。それはもう盛大にうるっと。
家で何かあったのか? と聞いても「何も無い。いつもの通りだ」としか言わないしで、凄く不安になる。
かと思えば、時折何かを口にしかけては口籠り、ぶつぶつと口の中で呟いては一人納得して自己完結してしまう。

なんだこれは。
もしかして、もう反抗期? それとも思春期? え? 早すぎない?!

気になる女子の一人や二人…なんて自体は兄としては歓迎すべき事ではあるが、俺個人の感情としては「断固反対! まだ早い!」である。
そりゃあ確かに、いつかはセブルスだって大人になって、一人の男性として女性を愛する日が訪れるかもしれない。
でもそれはまだまだ俺の中では先の先に取っておいて欲しい出来事なのだ。
(因みに俺個人の恋愛云々についてはゴミ箱辺りに捨てて置いてくれ)

セブルスのあつーい熱視線は俺が気づいていようがお構い無し。
どうにもこうにも穴が開きそうです。
気になって気になってドッキドキがムネキュンです。
なので、

「セブ…ちょっと聞きたい事があるんだけど」
「なんだ? いきなり」
「好きな子でも出来たの?」
「…は?」
「いや、だって! 最近何か言いたそうに見てるし…悩んでるみたいだし…ね?」
「…どうやら熱でも出てきたようで頭が涌いているらしいな」
「え、ちょ、ひどくない?!」
「セネカの頭の中の方が僕は酷いと思う」
「がーん!」
「口で言うな! …兎に角、根も葉もない事を口にするな。僕にとって今はセネカの事で手いっぱいだ。他に回す余裕なんてあるはずもない。分かったか?」
「セブ…そこまで僕の事を」

じーんときて、ぎゅっとセブルスを抱きしめると鼻を鳴らしてそっぽを向かれた。
照れてる照れてる。だからそういうとこが可愛いんだって。
…ああ、やはり両腕が使えるという事は素晴らしいな!
ちゅっと音を立てて親愛の情を頬に贈ると、腕の中で身動ぎする俺の愛しい弟。感極まるとはこの事だ。

「愛してるよセブルス! 俺の愛しい弟!」
「 き も ち わ る い 」

お、おおおいセブルス…今のは結構、きいた…。

ついつい調子に乗るのは俺の悪い癖。
涙が出そうなので今夜はひっそりと枕を濡らそうと思う。

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