初夜編 2
「ばーか、色気のない声出すなって」
「そ、そそそそんな事言ったって! い、いき、いきなり何をす――…って、何を順調に帯解いているので御座いましょうか」
「あー、ちくしょう。羨ましい腹筋しやがって」
「はわ、わわわっ…」
目にも止まらぬ早業とはこの事ですね!
あっという間に帯を引き抜かれ肌蹴られ、悲しいほど発達している腹筋を羨ましがられる。……あれ? いいんですか? 本当にあれでソレでこれな展開なんですか?!
「もう少し戸惑うとか何か無いんですか…」
「こういうのは勢いが大事なんだよ」
「誰の持論「俺」って言うと思ってました…「うるさい」うっ、……んっ!」
――噛みつくように唇を奪われた。
びっくりして反射的に跳ねた両腕は宙をさ迷って、結局椿さんの細い腰に添えるだけ。…私が力一杯抱き締めたらこの人はきっと、壊れてしまうんでしょうね。
長いなーと息苦しく思い始めた頃、漸く口が離れ、
「こっちはなあ、突っ込む方から突っ込まれる方になる覚悟を決めて来てんだよ。つーか、悩まなかったとでも思ってるのか? 大問題なんだぞおい」
やっぱり甘い雰囲気は無く。
むしろこの人は敢えて作ろうとしてないのでは? と思ってしまう。なんだか色々台無しですよねその台詞…。
「……普通は私が押し倒す方なのでは…?」
「嫌だね。てか、何が悲しくて俺よりも立派な体格の熊に乗られなきゃなんねーんだよ。お前重いし」
「うっ…、ひどい…」
「つーことで、どうせなら俺が攻める。安心しろ、俺は片手でホック外せるほど器用だぜ」
「そんな特技はこちらでは披露できませんよ。…何ですか、妬かせたいんですか」
「うんそう。たっぷりと妬けよ」
だから俺に抱かれてよ、景臣。
………………今、凄くこの人がかわいいと思ってしまった私は、とても重症なのでしょうか…。
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