真田妹くんの事情 2


「今更何を言われるかと思えば、他に誰が居るのです?」
「…分かって、おる。だが……」

きゅっと唇を噛み締め、嫌だと頭を振る幸村。…子供か! 一瞬頭痛がしたぞ。
じゃあ景臣意外の誰とだったらいいんだよ…と言いかけ、やめた。

「(おいおいおい、とっくの昔に摘み取ったと思ってたつーのに、何で今になって持ち出すんだよ…)」

――…だからこういう雰囲気の幸村は苦手なんだよ。昔の事を穿り返しやがるから。


実は正式に妹として対面する以前、俺は偶然幸村と出会ったことがある。…感の良い佐助は知っていると思うが、なんと幸村少年は名前も知らぬ少女に淡い恋心を抱いてしまったのだ。まあ、初恋なんてそんなものだよな。(ま、その幻想も一瞬で打ち砕いたのは俺だがな)

時間と共に、成長と共に昇華されたと思っていたが、深い所で根付いていたのかも知れない。…めんどくせえ。いくつになっても男は例外無く馬鹿だな。…俺もだけどよ。

はあ、


「兄上」
「……、」
「良いですか、これから言う事は一度しか言いません。で、す、の、で……耳の穴かっぽじいて良く聞きな」
「っ、しょ、承知!」

頷くのを確認し、肺に空気を誘い込んだ。

「生憎俺は真田の家に生まれたが、兄上の選ぶどこぞの馬の骨、東西眼帯ズ等々と婚姻なんて結ぶつもりは一欠片もねえ。いやだ。無理だ。よって、誰と残りの余生を過ごすのかも自分で決める。…ここまで育ててもらったが、それだけは譲れねえ。以上。
…まあ、でも、兄上の近くにはちゃんと居るからそんな顔はやめてくれ。

おい、ちょ、長い間お世話になりました! ――だから泣くなって!」

……頼むから無言で泣くのはやめてくれ。
こっちはまるで嫁に行くみたいな台詞で、顔から火が出そうなんだ。

俺は今なら羞恥で死ねる。


「兄上、いい加減なにか仰って下さい」
「……か、身体には気をつけるのだ、ぞ、」
「ええ、」
「何か困ったことがあれば遠慮なく某を頼っても構わないのだぞ」
「…ええ、景臣様でも無理な時にでも」
「む……、その、景臣殿が無体な真似をし「それはねえから」……そ、そうでござるか」

「私が選んだ相手は、そんな事する方ではありません」

そんな事出来る女じゃねえしな。

言った瞬間、しゅんと落ち込む様子を見せる幸村。
本人に自覚があるのか無いのか、…いや、この際無い方にしてしまうか。めんどくせえし。

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