02
びば、平穏万歳。
あ、どもーこんにちは。中身は大人、体は幼児、三郎です。
戦国時代だっつーのに、こんなに平和でいいのかって位は平和です。(俺の周りは)
もうすぐ1歳になろうかという俺には、戦とかそういう情報を耳に入れないようにとの配慮なのか、兄である幸村を見て現状を察する位しか出来無いでーす。
16になる幸村は、城主としての勤めを周囲に支えられつつ、何とかやっている。
時折、佐助に追い掛けられながらも顔を出しては、連れ戻されを繰り返している。
やー、偉いよねぇ。
俺の16の時なんて毎日遊んでばっかりだったもん。勉強? 何ソレ、オイシイノ?
い? 俺? あーそうですねぇ、今俺は一人で、
「う〜……やあっ!」
立つ練習の真っ最中であります! 隊長!!
どだっ、
「う゛〜(いってぇ〜)」
柱に掴まって足にうおりゃあっ! と気合いを込めて立つ、それだけ。
いやね、佐助とか幸村とか佐助とか幸村とか佐助とかが、あんまりにも過保護過ぎて。
居ない時じゃないと練習出来なくってさー。
(幸い、今は幸村を引きずって行ったから暫くは来ない)
今だって転んだけど、畳の上だから怪我はないし。
(佐助が居たら怒られる位じゃ済まない)
それに、俺には強い味方も居るからね!
「あい! ありっとぉ!(ありがとございますっ!)」
真田忍隊員Aとでも言えばいいのか。転んだ俺に一早く駆けつけ、いつも起こしてくれる忍くん。Aが居ると言うことはBもCもいる訳です。俺が自主錬を始めた頃から助けてくれています。
彼らのお陰で初めの頃より立っている時間も長くなり、歩けるようになるのも時間の問題です!
黒ずくめの無口な彼らは、頑張れとでも言うように、蝉のごとくまた柱に掴まる俺にエールを送ってくれる。ありがとう!!
右手でビシッと敬礼をし、再びチャレンジを開始しようとした。
「三郎様? なーにしてんのかなぁ?」
おかえりなさい……どうやら早くも終了でしょうか。
部屋の奥で柱に蝉になってる俺。
入口で仁王立ちし、顔はにこにこしてるのに、黒いモノを纏っちゃってる巷で噂のオカン佐助。…や、まて佐助、もうちょっと、もうちょっとなんだ。
焦った俺は、佐助に弁解しようと柱に掴まってるのも忘れて──手を伸ばした。
ぐらり
体が傾く。
やばい、そう思った瞬間、足を思わず出していた。
とて、とてとてぽすっ。
……。
え、ええ?
い、今俺歩けたよね! 偶然だけど!!
柱にいた俺は、転ぼうとした俺に駆け寄って来た佐助の足まで見事に歩き、足にしがみ付いてる。
初めて歩けた事に一人で大興奮していると、
「三郎様!!」
ぐるんっ、と視界が回り、目の前には佐助の顔。それはいわゆる「高い高ーいっ!」では?
うおっ、佐助!
め、眼が何かキラッキラしてるけどっ!!
「凄い! 凄いよっ三郎様!!もう一回っ! っじゃなくて、旦那! だんなー!?」
俺を抱えた忍の速いこと。旦那、旦那とお前はどこぞの妻かと言う位連呼して、兄幸村の元へと走るのだった。
俺はそれから約三時間、ぐったりと体力が無くなるまで歩くことを求められた。
(三郎ーっ! 某、某の所へ来るでござるぅぅ!!)
(三郎様! 俺、俺様の所!!)
(はぁ、はぁ、もう、いいかげんにしてくれ……)
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