01
上田城が城主、真田幸村様には弟君がいらせられます。
名は、三郎様
折悪しく、御父上である真田昌幸様が戦にて討たれた年に生を受けられました。
――幸村様はこの時、元服を迎えたばかりの15歳
生まれた赤子はそれはそれはとても愛らしく、幸村様も猿飛殿も城の皆も大変可愛がり、大切に育てられたのでございます。
三郎様の御生母様は産後の肥立ちが芳しくなく、直ぐにお亡くなりになりました。
父母のいない三郎様を幸村様はとてもとても案じられ、しかしその心配は杞憂となり、弟君はすくすくと元気に御育ちです。
幸村様は、
父のように兄として
猿飛殿は、
母のように兄として
と、いうように現在、俺は三郎のようです、マミー。
何の因果か神様に「もう一度やり直したら?お前の人生ツマンネ」的発言を受け、人生のリセットボタンを押されたようです。
目を開けたらそこはBASARAの世界でしたとか、マジでありえないんですけどとか、赤ん坊じゃツマラナイも何も無いんでは? とか、幸村と佐助若いなとか、まあ色々……。
そんなこんなで現在、真田幸村の弟として第2の人生を歩み始めている俺ですが、只今現在進行形で大変困ってます。
「三郎、あ・に・う・え、兄上と某を呼んでみよ」
「旦那、旦那、まだ無理じゃねえの? 三郎様は一歳にもならないんだぜ? そんな難しい言葉ハッキリとはまだ言えないって〜」
どうやら初めての言葉は「兄上」と呼ばせたいようです。
上手にお座りしている俺の両脇からのぞき込む勢いは流石は真田幸村。
熱いです。
燃えそうです。
あーとか、うーとか、言って見せたことはあるけどってゆうか、現実一歳位ですけど中身は二十歳そこらなんで。「兄上」と呼ぶには抵抗があるってゆうかさ……。
ぶっちゃけ恥ずかしいってゆうか、……ね。
俺が一人あーとか、うーと唸っていると、未だに「あ・に・う・えー」と呼びかける幸村と、こっそり「さ・す・けー」と言ってくる佐助。
そんな二人に内心辟易していた俺はその時、ヤケクソであった。
しかも、そう言えば、とこの前来たアイツの顔がふと過ぎり、ほんの出来心で、そう…軽い気持ちで口に出してしまったのだ。
あれを。
「れっつぱーりぃー!」
あれ?なんだ?
二人とも、なんで固まってる?
……おい幸村、なんだその槍は。
何とも言えない空気が場を支配した。
(俺、何かした?)
「佐助、俺は今すぐ奥州へ行かねばならぬ用事が出来たのだが」
「奇遇だね旦那。俺様にもその用事が出来たみたいだぜ」
シャキンッと、何処から出したのか巨大な手裏剣が佐助の腰に収まった。
そして、物騒な笑みとオーラを残して、二人は北の地へとその足で旅立っていった。
「あにうえー、さすけー」
ぽつんと一人残された俺が漏らした呟きに、天井にいた忍隊の者達が感涙に浸っていたとは俺には知る由もなく。
おーい、留守番とか超淋しいんですけど。
(おのれぇえっー! 政宗殿ぉお─っ!!)
(what! 何なんだテメェ等!!)
(某が! 某が一番と決めていたのでござるぅぅぅっ!!)
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