02
次に目が開いた時に視界を埋めたのは、またも赤。
お互い向き合って寝てんのかと思ったんだけど、俺の背中にはちゃんと人の温もりがある。
あれー?兄上が分裂したーって寝ぼけ眼で首を傾げてると、おっきな手が腹の辺りに乗っかってるのが見えて思い当たるのがもうお館様しかいませんでした。
…通りで何か重いな〜って思ってたよ、あれなの?二人して実は俺の安眠を妨害しにきたんじゃねえの?って思った俺はぺちぺちとお館様の手を軽く叩いて武田ロックから逃れようと超必至こいた!
ぐぬうっ!って踏ん張ったけど俺なんかの力じゃ到底動きそうにない。
てか、この師弟なんなのぉ!俺を挟んで仲良く「親子川の字」とか!とかとかとかぁ!!
もうマジ羞恥でお花畑に逝っちゃいそう…川の字って…あんた等仲良すぎでしょう!その師弟愛に俺を巻き込んじゃダメ!俺の気持ちも察して!
一頻り抵抗という名の無駄な足掻きをして、ぐったりとした俺が顔を右に向けると安らかな…っていうか物凄く気の抜けた兄上の寝顔(よし、涎はたれてない…)
同じように左を向くと腕を枕に目を閉じてるお館様…ちょっと口が開いてるよ。
二人ともホントに気持ちよさそうに寝てるみたいで(…俺の抵抗、気づいてました?)、今声をかけたら何か悪い気がして…起き上がるのを諦めました。
しょうがねえな〜って感じで溜息ついて、また暑くなった日陰で力を抜いたよ…疲れたし。
俺って優しい〜…あれか?こういう時こそ佐助みたいに「俺様って〜」って使うべきだよな、うん。でも恥ずかしいから却下するけどね。
って、暫くはそのままじっとしてたんだけど…、
「…あれ?…いつおきれるの?おれ?」
我慢出来なかった。
つーか、俺に我慢出来るわけ無いよね!
これからどうしようって考えちゃう位、中々起きなかった二人。その間でもう一度寝ることも出来ずに、本気で悩み出した俺は道行く(?)女中さんに救出してもらおうと思ってジッと待てを続行。大丈夫だ、きっと助けはくる。
待って、
待って待って、
待ち続けて…、
ぐぅー…、
結局誰も通んなくて、いつの間にかまた眠ってしまった。…意志が弱い?すいません、不可抗力だと思うんです。や、なんかね安心して眠っちゃったとかそんな所です、多分。
――だから、
「わー、ズル過ぎんでしょーお二人共…」
いつまで経っても戻ってこない上司達を探して佐助が来た時には、俺も安らかな寝息の仲間入りしてて、
「ぷっ、三人して同じかっこ…」
大虎、中虎、小虎…ってとこですかねえ?って笑う佐助が何とも羨ましそうに溜息を吐きつつも、風邪引いたりしない様に上着を掛けてくれたのにも気づかなくて、
「幸せそうに寝てくれちゃって…もう」
お団子、俺様がたべちゃいますよーって声で兄上が飛び起きるまで…優しい風に頬を撫でられていました。
仲良きことは暑苦しかった…です。
(ならぬーッ!)
(わあ!シィーッ!シーってば旦那ぁ!)
(なんじゃ…騒がしいのう)
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