02


暫く三人が頭上で言い合う。と、政宗が二ヤリと俺にだけ見えるよう笑みを浮かべた。


…実に凶悪です。
男前なのにこれは凶悪過ぎます。



「まさむねー、どうし…うわぁ!」
「Lets Party!Ya−ha−!!」

ガクンッと馬が踏み止まったと思った瞬間には、空の上。いや、空の上というのは間違いかも知れないけど俺の少ないボキャブラリーからはそんな表現しか浮かばない!

だって下を見たら火を噴く竜が!ガーッて大口開けた竜が―――!!


政宗と言えば摺上原、摺上原に来たら双竜陣、双竜陣と言ったら火を噴く竜・葬 竜 陣!ですよね!…え?え?ええ?政宗本気か?本気で幸村達迎え撃っちゃうのかー?!
なんて大人気ない…!!



「この葬竜陣…アンタ等に破れるかな?」


なんかカッコいい台詞を言いながら政宗がビューンと竜の頭を飛び越える。それを真似て幸村も――飛び越えたぁああ!やると思ったよ!

速度を落とさず飛び越える(というか自分とこの陣なんだから慣れていて当然だよね!)な政宗に負けじと馬を駆る幸村。凄いの一言だけど、お願いだからお前も手綱を握ろうか!!やーめーてー、見ているこっちはハラハラしっ放しだから!!やーめーてー!!


…、


…あれ、


………佐助?佐助ぇえ??
ままままさかお前も飛び越えるのか?!


「さすけー!むりはだめー!!」
「大丈夫、三郎様!俺様忍だよ?今行くから、待っていて下さいーっよ、ッぁああうそだろぉおおお!!!」
「さすげ――!!!」

佐助も飛び越えた!と思った瞬間、横から炎が噴き出して佐助が吹き飛んじゃったんだけどー!だから無理しちゃダメだって言ったじゃんか!一番冷静に見えたけど、実は一番冷静じゃなかったんだよね佐助ぇえ!


「佐助!!…くっ、忍がさだめ…分かっている…だが…ッ!」
「…勝手に殺さないでくれ、旦那…」

一時は吹っ飛ばされた佐助だけど、それも一瞬の事だったみたいで直ぐに追いついた。持ち直した佐助は凄いけど、何気にヒドイよお兄様…!…ふー、


「あう…はらはらするっ……」
「三郎…!立つんじゃねえ!落ちるぞ……ッ!!」
「え――…?」

佐助が吹き飛んだ瞬間、無意識のうちに政宗によじ登ったらしい俺。意識してたら怖くて絶対しなかったと思うような事をしてたもんだから、政宗の焦った声に漸く我に返って、見なきゃいいのに

下を見た。



「ぃにゃ―――ッ!!!!!(高―!!)」
「おお、おい!馬鹿!暴れるな!!!」


高い速い安い!じゃなくてこえぇえええ!!一気に血の気が引いちゃったんだけどこれー!!


未だに速度を落とさず走り続ける馬の上で、半ば恐慌状態に陥った俺は政宗に無我夢中でしがみ付いた。幸村の「は、離れるでござる!」とか、佐助の「三郎様ー!」とか聞こえた気がするけどそんなの無理だってばよー!!こっちは必死なの!生と死の狭間(?)なの!うわぁあーん!!(涙目)

余りにも必死こいてしがみ付くから、政宗が危なくって腕組みを解けない事に気が付けない―――…ということは二人とも危ない訳で。どう見ても危ない事この上ないのに、そらーもう必死過ぎて気がつきませんでした!!だから、


「あ――ッ!?」
「ぬおッ!?」
「――ッShit!!」
「…ふえ?」

上でもちゃもちゃしてた俺達の所為でバランスを崩した馬がつんのめり、…気がついたら俺だけが宙を舞う。

所詮お子様握力・もみぢの手!
短い指でぎゅっと青い陣羽織を掴んでいたつもりだったけど、重力であっさり引き離され…頭から投げ出されていた。


このまま地面に激突して一貫の終わりか!…と誰もが思った――その時ッ!



しゅぽん。


「…なんだ?今、何か入って」


「……小十郎?!」
「……片倉殿?!」
「……右目の旦那?!」
「政宗様!城を抜け出して今までどちらに行かれてッ…――真田…と猿飛か?どうしたんだ、お前等まで」
「いや…あの、右目の旦那。後ろの籠に…」
「…?なんだ、お前らも野菜を貰いに来たのか?先程も前田のとこが…」
「いえ、片倉殿…そうでは無く…」
「????」

一行の前に現れたのは、竜の右目こと片倉小十郎。どうやら畑からの帰りらしく…手ぬぐいを取り汗を拭う様はとても輝いて見えた。


「折角だ、城に寄って持っていけ。…構いませんよね政宗様、」
「お、おう…」


小十郎が背負う籠の中には――…、偶然にもすっぽり入ってしまった…俺。

ゆらゆらゆらと揺れる籠の中。
何と言ったら良いか分からず気まずい感じの三人と、何も知らない一人の会話なんて分からず俺は…気を失っていました。…とさ。



闘走劇場…その先に、


「…こ、こんにちは…こじゅろーさ…ん」
「………あいつらぁあ…ッ!」
「まって、こじゅうろさん!まって!ばちばちまってぇええ!!(極殺ー!極殺はやべーよー!!)」

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