01


……拝啓皆様、お元気でしょうか?

俺は元気です。
この上も無く元気です……うん、


「まって!まってまって!!おねがいですたづなにぎってぇえ!!
「HA-HAHAHAHA!!No problem!」
「はやいはやいはやいぃいー!!!(ぜんっぜん大丈夫じゃねえよー!)」

No problemって、ほんと便利な言葉だよね!絶対この人これで済むと思ってるよ!!


もう一度言います。俺は元気です。
でも何で政宗と一緒に馬に乗ってるのか分かんないんですけど!!どういうことー?これ一体どういうこと?!――確か俺…、お八つも食べ終わって悲しいほど日課になってるお昼寝をしていた筈なんだけど…


尋常でない揺れにパチッと目を覚ました俺。
気持よく寝ていた俺を眠りから無情にも引き離した存在、奥州筆頭こと伊達政宗はいつもの恰好じゃなくて何故か第二衣装でした。

政宗+俺+馬=二人で騎乗
(ってゆうか何で俺、寝てたからって馬に乗った時点で起きねえの…)

前の慶次と松風の時はその余りの高さ(というか松風の存在)にビビりまくった俺だけど、今度は違う意味でビビりまくりです。
だって!この人手綱握んない癖してすんごいスピードで走ってるんだよ!やめてやめて!俺のノミの心臓はストップ寸前ですぜ筆頭―!!

大体ね!俺あんたにゲームでも追いついたこと無いから!追いつける幸村とかそういう人達が異常なの!俺が普通なの!だからお願いします止まってくーだーさーいー!!


「うぅー…(ぎゅぎゅー)」
「Ah?なんだ、今日は随分甘えんぼだな…(なでなで)」

政宗に必死になって掴まってたらあらぬ誤解を受けてしまった。ち、違う!違うからね!これ別に甘えてるんじゃねえから!(そんな、恥ずかしい事…ッ)だからお願い、頭撫でるんなら手綱掴んでまさむねぇえ!泣くぞ!!


この六爪邪魔だな…と思いつつ政宗の腹にしがみ付く。そこで漸く息を吐き、安定した気分になれた。そして、人間一つの事が落ち着いてくると他の事が気になってくる訳でして…、

「…ねえ、まさむねー。どこにいくの?」
「奥州だ」
「ふー…ん?んん?おうしゅう??」

予想していた様で、予想して無かった答えがカキーンっと返ってきた。
そっかそっかー、奥州かー。そうだよな、政宗ってば奥州筆頭だもんなーって―――…おおおおい、いやどうして奥州?しかも俺一人で?!あっれー幸村は?佐助は?

はっとそこで気付く。
奥州に行くにしては俺、身軽すぎないか?
(足は裸足、腰には幸村の六文銭、懐には非常食の饅頭、と俺ェ…)



「―――ッチ!感づきやがったかッ!」

大きな舌打ちと共に政宗が速度を上げる。
流れる景色が俺の目には捉えられなくなって、空気がバッシバシ顔に当たって超痛い。おおおおこれが光の速さって奴か?


「――――ぁて…むねぇッ!!ぬぅおおおおおおお!!!」
「――――三郎さまーッ!!!」

うん…とっても聞き覚えのある声が後方からぐんぐん近づいてくる。…俺、これだけで政宗が何をしたか分かっちゃったんだぜえ。


「…ゆーかい?」
「No!俺は持ち帰っただけだぜ!」
「―――っそーいうのを拐かしってゆうんだぜ!竜の旦那ッ!」
「あ、さすけーあにうえー」
「「無事(か)?!」」

追いついた二人に同時に声を掛けられた。
相変わらず見事にハモる二人に「うん、おはよー」なんて返事を返した。…途端に佐助はガクッと項垂れちゃったんだけど、なんでだ?


「政宗殿!三郎をお放し下されえい!」
「そう言われて放すと思うのか、真田幸村ッ!」
「いや旦那!今放すと三郎様が危険だ、竜の旦那だけ落とす事を考えるんだ!」
「無論!」
「おいおい、随分と物騒なこと言ってくれるじゃねえか!」

政宗を挟んで幸村と佐助が会話をする。
佐助の眼は冷静に物事を捉える忍の眼差しに、幸村の顔は勇猛な若武者の相貌に。
二人とも攫われた俺を助けようと必死に頑張ってくれてる。…うん、くれてるんだけど、


佐助、お前馬に乗って無いよね。
そして幸村、馬にはちゃんと乗ろうぜ!

馬に乗らなくても追いついちゃう忍の脚力と…なんてーのアレ、しゃがみ乗り?で政宗に追いついた二人にすっごい突っ込みを入れたい!けど二人の顔は真剣そのもの!邪魔しちゃ悪いよね!コレ!

武器だけは三人とも取り出してないから安全っちゃ安全だけど、俺は突っ込みたい気持ちでムズムズうずうずしちゃうんだぜ!!

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