02


「ムグ宗殿のずんだも某は美味と感じまするが、やはり佐助の団子が美味でござムク゛ー!」
「お前には聞いてねえよ! 真田幸村ぁ!」
「ちょっと竜の旦那、真田の旦那の団子に対する執着・評価を甘く見てもらっちゃあ困るね。この御人、兵(つわもの)だよ……」
「日本一の兵でござる」
「つわものー」

はははは、乗っかっておいて何ですけど
団子の兵ってどんな……?
甘い匂い漂う兵なんて、俺いやだからね?! カッコイイ兄でいて下さいお願いしますー!!


「真田の評価なんざいいんだよ! 三郎は俺の方が美味いって言ってるんだぜ?さっさと認めな」
「はあ? そんな事一言も言ってないじゃないの、ちゃんと聞いてた?」
「なんと! 政宗殿は耳が御不自由であったか」
「おい、政宗様は耳はよろしいぞ」
「いやそういう問題だけど若干違うから」


俺の「つわもの」発言を皮切りに、頭上でわやわや言い合う声がぽんぽん飛び交う。

煩く無いよう直ぐに佐助の手が俺の耳を塞ぐんだけど……政宗は兎も角、兄上の声はでかいからあんまり意味無いんだよねー。……丸聞こえナノデス。わーい!


ちらっとお館様の方を見ると「やれやれまたか」みたいな顔をしてのほほんと此方を見ていた。うん、俺、そっち行きたい。
だってこのメンバーでお八つを頂くと決まってこの三人(+小十郎さんも控え目に)がわやわやしちゃうんだよなー、何かしらの理由で。ケンカするほど仲がいいんだね、みんな!(にこっ)



「――そんなに言うんだったら、今三郎に決めてもらおうじゃねえか、」


カッとなったらしい政宗が一言放ち、ずんだを刺した楊枝を俺にぐっと近づけた。それに張り合うように佐助も一つ俺の目の前に持ち上げる。

……え、なにこの選べみたいな状況。
もしかしてもしかして、……俺に勝敗を投げたの?! やめて! みんなで俺を期待の眼差しで見るのをやーめーてー!!



眼差しに根負けして、仕方なしに目の前に並べられた団子を見比べる。

佐助の作る団子は飴色の餡のかかった、みたらし団子。
政宗が作ったという団子は緑が鮮やか、ずんだ団子。

どちらも美味しくて甲乙付け難いお袋の味です(いや、二人ともお袋じゃないし、性別男だけど例えです例え!)


さあさあ俺を食べてくれ! と目の前で二種類の団子が揺れる。ううう、どっちも美味しいよ! 美味しいんだよー!? 選ぶなんて、俺にとっちゃ苦行だよおぉおおー!


――でも、



「どっちもおいしいけど、おれ、さすけのだんごすき!」

ぱくっと佐助の楊枝に刺さった団子にかぶりついた。

「NOoooooo!!」
「……三郎様っ!」


途端に響いた絶叫。


ごめん政宗。
俺、ずんだよりみたらしのが好きなんです。好みの問題なんだよね、ぶっちゃけ。


落ち込む政宗の声とそれを宥める小十朗さんの声と「佐助がやりましたぞ! お館様ぁああ!」「うむ! でかしたぞ佐助ぇいい!」という大音量の会話をBGMに、もっちゃもっちゃと口を動かして佐助におかわりを要求した。


とある昼下がりの出来事


「……(もっちゃもっちゃ)」
「……おいしい?」
「うん!」
「へへへ、そっかそっかあー(でれー)」

佐助が凄く嬉しそうに抱きしめてきたから、まあ、いっかなーなんて思うよ! えへへー。

まえもくじつぎ
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -