01


団子。
それはまあるく、むにむにとした柔らかな弾力を口の中で弾ませる美味しいお八つ。
真田家では兄幸村が好むため頻繁に消費される人気メニューです。え? もちろん俺も大好きだよ? うましー!


「三郎、口に餡が付いてるぞ」
「ふぉ? ん? んん?」
「ああ、待てそこじゃねえ……こっち向け」

ぺちぺち顔を触ってたら仕方ねえな、という感じで小十郎さんが懐から懐紙を取り出す。
その手があと少しで俺に届く──という所でそれを遮る影が俺を引き寄せた。


「……さすけぇ?」

くいっと口端が拭われて、すっぽりと収まった腕の中から佐助を見上げた。
え、あの、空振りに終わった小十郎さんの手がちょっと震えてんですけど――怖っ! ちょっ、眉間に皺が寄ってますよ小十郎さんんん!! 怖っ!


「テメエ……」
「あっは、どうしたの右目の旦那? 怖い顔しちゃって。三郎様が怯えちゃうでしょー?」

ねー、なんて俺に振る(振らないで!)佐助。バッチーンという小さな火花が頭上で一瞬、燃えた。いや、うん。別に小十郎さんに拭って貰いたかったとかそんなんじゃないんだけどね。うん、うん……。


「すっかり板についておるのう……」
「Hey! 猿! 三郎をこっちに寄こせ」
「佐助ぇ! 某も! 某も三郎を膝に!」
「……大将も口についてますよ。――てか誰がアンタに寄こしますかっ! て……違う、違います旦那、アンタは手から団子を離してからにして下さいよ! もう!」


お館様がのんびりとお茶をすすって、かかかと笑う。その隣で政宗がカモーン! とイイ顔で親指を立て、幸村が団子を両手に腕を広げていた。……あれ、佐助がちょっと挙動不審です。俺的にお館様のお膝の上が一番平和そうなんだけどな。……どう思う?



あ、どうも三郎です。
お八つだよ全員集合! の名の下、現在武田家(+伊達主従)でお団子を頂いてまーす。

定期的に来るようになった政宗(……いいの?)が持ち込んだ奥州お土産ずんだ餅も、一緒に囲んでもぐもぐもぐ。うましー。これぞお団子パーリーだな!


「さすけ、ずんだもー」
「ん、はいはい。どうぞー、落とさないようにね」

小皿に盛られた俺のお団子を、楊枝で一つ持ち上げた。一口噛んでぷつりと歯切れ良く噛みきると、直ぐに優しく広がった甘味に頬が落っこちそうな俺はにこにこにこにこ。
美味しいもん食べると人って自然と笑顔になるよねー。えへへ。


もっちもっち
もっちもっち


口いっぱいに頬張って食べていると、ふいに重くなった俺の頭。

あれ? と思って見上げると政宗がニヤー。どうやら小十郎さんと場所を交代して頭を撫でているみたいです。…なんで代わったし。
(因みに現在の並び順は右からお館様、小十郎さん、政宗、佐助(と俺)、兄上)


「どうだ、美味いだろ?」
「うん!(にへー)」
「Ha! そうだろうなあ(ニヤー)」


わしゃわしゃと髪がかき混ぜられて。
一瞬佐助が嫌そうに身を引いたけどそれに構わずに、


「――猿の作った団子より、俺の団子の方が美味いとよ」


ニタリと口元をつり上げて政宗が佐助にドヤ顔をかました。
……微妙に空気が重くなった気がしたんですけど。なに佐助に喧嘩売ってんのまさむねぇええー!


「へえー……これ、竜の旦那が作ったやつだったんだ。奥州筆頭って暇なんだねえ」
「テメエ、政宗様に何て事言いやがる……! 政宗様には帰ったら山ほど政務が待ち構えていらっしゃる、お暇じゃねえんだぞ」
「Oh……小十郎、それはマジでか」
「マジで御座います」


あ、一気に政宗が萎んだ。
てか小十郎さん容赦ねえな。ちょっと政宗が可哀想な気がしたけど、仕事サボるのはいくないよ!

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